矯正治療の後の後戻りとは、矯正によって一度整えた歯が、時間の経過とともに再び元の位置に戻ってしまう現象です。
時間もお金も掛けて治療したのに、後戻りをしてしまうと、これまで努力してきた分、やはり残念な気分になってしまいますよね。
今回は、後戻りを防ぐための対策や、後戻りが発生した場合の対処法について解説します。矯正治療の後戻りについてきちんと理解し、治療後も長く健康な歯並びを保ちましょう。
矯正治療の後戻りが起こるのはなぜ?
矯正装置を外した直後は、歯を支える骨や歯茎などの周囲の組織が安定していません。不安定で動きやすい状態にもかかわらず、そのまま放置してしまうと、歯は元の状態に戻ろうとし、再び乱れてしまうのです。
矯正治療によって理想の位置に歯を動かした後は、歯や周囲の組織を安定・維持させる必要があります。以下に後戻りを引き起こす原因を挙げていきましょう。
歯を支える組織の記憶

歯は歯槽骨(しそうこつ)と呼ばれる骨や、歯根膜(しこんまく)と呼ばれる組織によって支えられています。
矯正治療で歯を動かした後も、これらの組織は元の位置に戻ろうとする力を持っています。言うなれば「昔の記憶」によって歯が元の位置に戻ってしまうのです。
そのため、治療前の歯並びが複雑であればあるほど、後戻りが起きやすい傾向があります。
癖や生活習慣

無意識で行っている癖や生活習慣が後戻りの原因となる場合があります。例えば、舌を前に押し出す癖や口呼吸、頬杖をつく、横向きに寝るなどです。一定の力が継続して加わることで歯が動いてしまうことがあります。
特に、歯や顎が成長過程にある小さなお子さんの場合は、歯並びに影響が出るお口周りの癖には注意が必要です。お子さんの歯並びに影響する癖とは?のコラムで詳しく解説していますので、併せてご参照ください。
これらの癖を治すためには、コラムでお伝えしたタングクリブ(タングガード)という装置もありますので、気になる親御さんは検討してみても良いでしょう。
リテーナー(保定装置)の装着不足

矯正治療が終了した後は、きれいな歯並びを維持するために一定期間リテーナー(保定装置)を装着します。装置を外して6ヶ月間が最も後戻りをしやすいため、一般的には1日20時間以上の装着が推奨されています。
しかし、リテーナーの装着が面倒になって止めてしまったり、適切に使用しなかったりなど、決められた装着時間を守れない方がいらっしゃいます。
早期にリテーナーの使用を止めてしまうと、後戻りが進行しやすくなりますので、患者さんご自身の判断でリテーナーを中断しないでください。
無理のある矯正治療

「抜歯を避けたい」などの患者さんの要望に沿うために、やむを得ず最善の方法ではない治療が行われるケースもあります。
お気持ちは重々理解できるのですが、無理のある非抜歯矯正や部分矯正などを受けていると、後戻りが発生しやすい場合があります。
後戻りを防ぐにはどうしたらいい?
矯正治療の後戻りを防ぐための対策には以下に挙げるようなものがあります。きちんと対処することで、歯の位置が安定し、後戻りを最小限に抑えることができるでしょう。
リテーナー(保定装置)をきちんと使用する

先ほどもお伝えしたように、矯正治療後は、歯を正しい位置に保つためにリテーナーの装着が不可欠です。
リテーナーは大きく分けて、取り外し式(マウスピースやワイヤーで歯を支えるタイプ)と固定式(歯の裏側にワイヤーを貼り付けて固定するもの)があります。
取り外し式は、装着期間や使用頻度など歯科医師の指示をしっかり守ることが大切です。破損や緩みがないかチェックし、問題や違和感があればすぐに歯科医院で相談しましょう。

後戻りが起こりやすい部分は、固定式のリテーナーの方が適している場合もあります。どちらのリテーナーが良いのか、状態に合わせてしっかり選定するのが大切です。
定期的な歯科検診

矯正治療後も定期的に歯科検診を受けることが重要です。検診の際は、歯の動きをチェックし、必要に応じてリテーナーの調整や噛み合わせの調整をします。
万が一、後戻りが発見された場合でも、早期に対処できるので小さな処置で済むことがほとんどです。
舌癖(ぜつへき)の改善

舌癖(ぜつへき:舌の位置や動きの癖)があると不用な力が加わるため、後戻りのリスクが高まります。
これを改善するために口腔筋機能療法(MFT)を治療に取り入れることがあります。美しい口元を維持するために、舌や唇の正しい使い方を習得することも大切です。
正しい口腔ケア

口腔内を清潔に保つことは、きれいな歯並びの維持にも繋がります。歯周病や虫歯などの口腔疾患を予防することにより、歯並びも安定しやすくなります。
ご自宅でのセルフケアと、歯科医院での定期的なプロフェッショナルケアを併用することで、清潔な口腔環境を保ちましょう。
もし矯正治療の後戻りが起こってしまったら?
矯正治療の後戻りが起こってしまっても、適切に対処することで症例を抑えることができます。
まずは早めに歯科医院にご相談を

後戻りを感じたら、できるだけ早く担当の歯科医師に相談しましょう。歯の動きが軽度であれば少しの調整で済みますし、再びリテーナーを使用するだけで改善できる場合があります。
舌癖や噛み合わせのチェック

後戻りの原因が、舌で歯を押す癖や歯ぎしりの場合、これらの癖を改善する必要があります。
歯科医師や歯科衛生士から舌や唇の正しい使い方を学び、歯並びに影響する癖を治していきましょう。
詰めもの・被せもので対応

「歯が軽度に傾いている」「歯と歯の間に僅かな隙間がある」などの部分的な問題には、詰めものや被せもので対処することも可能です。
矯正治療の再開

後戻りが進行していると、再度矯正治療が必要になることがあります。再度矯正治療を行う際は、部分的なワイヤー矯正や透明なアライナー(インビザラインなど)を使って、歯の位置を調整することがあります。
また、後戻りが深刻なケースでは、もう一度治療計画を立て直し、全体的な矯正治療を行うこともあります。この場合は、生活習慣や口元のトレーニングなど、治療計画に新たなアプローチを取り入れ、後戻りが起きにくいように注意して再治療していきます。
後戻りに注意して、理想的な歯並びを維持しましょう
今回お伝えしたように、矯正治療によってきれいに整った歯並びは、油断するとすぐに後戻りをしてしまいます。せっかく手に入れた理想的な歯並びですから、維持できるようにケアすることが大切です。
後戻りの原因の多くは、リテーナーの装着時間の不足によるものです。きれいな歯並びを維持できるよう、歯科医師の指示どおりに装置してくださいね。
また、定期的な歯科検診や正しい口腔ケアも歯並びの維持には重要です。後戻りを防ぐためにも定期検診をご活用ください。

町田歯科・矯正歯科では、患者さんの歯並びを正確に検査し、一人一人にぴったりの矯正治療をご案内いたします。
町田歯科の矯正情報特設サイトでは、実際の症例や費用についても解説していますので、町田で矯正治療をお考えの際は、町田歯科・矯正歯科にお気軽にお問い合わせください。