皆さんは学校で行われる歯科検診を覚えていらっしゃいますか?小さい頃は、虫歯がないかドキドキしたり、不安になったりした記憶があるかもしれませんね。
以前過剰歯のコラムでもお伝えしましたが、学校歯科検診は6月30日までに行われることが法律で定められています。歯や口腔内の状態は、食生活などの生活習慣を反映するため、小さい頃から学校で確認するのは、お子さんの健康面や公衆衛生の観点からも有益なことです。
町田歯科でも、学校歯科検診の結果を受けて小児歯科を受診されるお子さんもいらっしゃいますので、今回は、そんな学校歯科検診について詳しくご説明いたします。
学校歯科検診とは?
まずはそもそものお話から始めましょう。学校歯科検診とは、文字どおり、学校で行われる歯やお口の検査のことです。
歯科医師や歯科衛生士が、児童生徒の歯の状態や噛み合わせなどをチェックし、虫歯や歯周病などの予防や治療の必要性を判断します。また、歯磨きの仕方や食生活などについてもアドバイスや指導を行います。
学校歯科検診の目的
学校歯科検診の目的は、大きく分けて二つあります。
お子さんの歯や口の健康を保つ
一つ目は、児童生徒の歯・口の健康を保持し、向上させることです。歯やお口の健康は、全身の健康にも影響してきます。詳しくは歯周病治療のページで解説していますが、虫歯や歯周病は、感染症や心臓病などのリスクを高めることが明らかになってきました。
また、歯や口の状態は、咀嚼(そしゃく)や発音などの機能にも関係します。咀嚼は、食べ物を消化しやすくするだけでなく、脳や神経系にも刺激を与えることがわかっています。そして、しっかりと発音できることは、会話を通じてのコミュニケーションや自己表現には、不可欠のものと言えるでしょう。
学校歯科検診は、児童生徒の歯・口の健康をチェックし、問題があれば早期に対処することで、身体的・精神的・社会的な健康のサポートを提供する機会になっているのです。
お子さんの自己管理力、健康意識を育む
二つ目の目的は、児童生徒の自己管理能力や健康意識を育てることです。学校歯科検診は、お子さんに自分の歯やお口の状態を具体的に知らせることで、健康に対する関心や、責任感を高めてもらうきっかけになります。
また学校歯科検診では、お子さんに日常的な歯のケアや、定期的な歯科受診の必要性を伝えることで、健康を維持するための行動や習慣を身に付けてもらいます。
さらに、友達や先生たちと一緒に、歯やお口の健康づくりに取り組むことで、協力性や主体性を育むことにもつながるでしょう。
学校歯科検診の実施時期と実施方法
冒頭でも触れましたが、学校歯科検診は、学校保健法施行規則に基づいて毎年6月30日までに実施することが定められています。
そして、学校歯科検診の実施方法は以下のような手順で行われます。ここからは保護者の皆さんのご参考にもなるように、学校歯科医が学校側と連携してどのような対応をしているかも、併せてご説明しましょう。
準備
学校歯科医や歯科衛生士が、検査室の配置や照明、プライバシーの保護などを確認します。また、検査器具や記録票などを用意します。学級担任や保健主事や養護教諭などと打ち合わせをし、必要に応じて事前に保健調査を行うこともあります。
検査
児童生徒が一人ずつ検査室に入り、歯科医や歯科衛生士が問診・視診・触診を行います。これが皆さんも学生の頃に受診されたものですね。
検査項目は、姿勢・顎顔面全体のバランス、口周囲・口腔内の状態、口の開閉状態・顎関節の状態、歯列・咬合(こうごう:咬み合わせのこと)の状態、歯垢の付着状態、歯肉の状態、歯の状態などです。
各項目については、異常なし・要観察・要精検の3段階で判定し、記号や補助記号を使って記録します。
指導
児童生徒に自分の歯や口の状態を伝えます。また、歯磨きの仕方や食生活について、アドバイスや指導を行います。必要な場合は、保護者への伝達やかかりつけ医への受診を勧めます。
報告
児童生徒に結果報告書を渡します。結果報告書には、自分の歯や口の状態、指導内容が記載されています。また、学校にも結果報告書を提出し、学校では結果報告書をもとに、児童生徒の健康管理や指導計画を立案して今後に役立てていきます。
学校歯科検診の結果報告書
学校歯科検診の結果報告書とは、児童生徒へ自分の歯や口の状態や指導内容を知らせるために渡される書類のことです。上述のとおり、これが学校における児童生徒の健康管理や指導計画につながりますので、とても大切なものになります。
具体的に結果報告書には、以下のような項目が掲載されています。
- 氏名・性別・年齢・学年・クラス
- 検査日・検査者
- 歯列・咬合の状態
- 歯垢の付着状態
- 歯肉の状態
- 歯の状態
- 指導内容
- 受診勧奨
項目の中には、記号や補助記号が記載されるものもあります。皆さんも学校歯科検診時に、「C●●」「F~~」といった言葉を聞いた覚えがありませんか?これらは歯の状態を示している記号なのです。
虫歯がある場合はC(Caries)、欠損している場合はM(Missing)、詰め物や被せ物がある場合はF(Filling)という記号が使われます。また、歯列・咬合の状態では、正常な場合はCO(Crowding 0)、歯の間が詰まっている場合はC1~C4(Crowding 1~4)、開咬や反対咬合などの異常がある場合はGO(Gnathological Observation)という記号が使われます(これらの記号や補助記号は、日本学校歯科医会が作成した学校歯科検診マニュアルで詳しく説明されていますので、興味のある方はご参照ください)。
そして、結果報告書を受け取った児童生徒は、自分の歯や口の状態を把握し、保護者やかかりつけ医へ相談することになります。
スクリーニング検査としての位置づけ
学校歯科検診は、学校で行われる歯科の健康診断、いわゆるスクリーニング検査です。スクリーニング検査とは、大勢の人の中から「特定の病気の疑いがある人」の早期発見、早期治療につなげるための検査のことをいいます。
学校歯科検診で見つかった異常や問題点は、保護者に結果報告書で伝えられ、そこには受診勧告や指導内容なども記載されていますので、きちんと指示に従いましょう。
また、スクリーニング検査は確定診断ではありませんので、結果報告書に従い、かかりつけの歯科医院で再検査を受けることが大切です。
学校歯科検診と歯科医院の定期検診の関係は?
学校歯科検診の結果に問題がなければ安心かというと、そうではありません。学校歯科検診と歯科医院の定期検診は、どちらも子どもたちの歯の健康を守るために、重要な役割を果たしています。ただし、両者には違いもあります。
検診の目的
学校歯科検診は、学校で行われる集団検診です。その目的は、子どもたちの歯の状態を把握し、虫歯や歯肉炎などの予防や早期発見、早期治療を促すことです。
一方、歯科医院の定期検診は個別に行われる検診です。その目的は、子どもたちの歯の成長や発育を追跡し、必要に応じて矯正や補綴(ほてつ)などの実際の治療を行うことになります。
検診の方法
学校歯科検診は視診と触診で行われます。歯科医院の定期検診は、視診と触診だけでなく、レントゲンや口腔内カメラなどの機器を使って詳しく調査します。また、プラークや歯石の除去や、フッ素塗布などの医療的な予防処置も行うことができます。
検診の頻度
学校歯科検診は年に1回程度行われます。一方、歯科医院の定期検診は、年に4回程度行うことが多く、3ヶ月に1度は歯科医院で歯の状態を確認するのが望ましいと言えるでしょう。
学校歯科検診と歯科医院の検診で、小さな頃から健康な口腔環境を
今回は、学校歯科検診について解説しました。実は学校歯科医と学校側は、お子さんの歯やお口の健康のために、かなり綿密なやり取りを行っているのがご理解いただけたかと思います。
学校歯科医の職務については学校保健安全法で定められており、幼少期から歯と口内環境を健康に保つのは、非常に大切なことだと認識されているのです。
お子さんの歯を守る両輪
学校歯科検診と歯科医院の定期検診は、それぞれ異なる目的や方法や頻度で行われますが、両者は補完的な関係にあります。
お子さんは学校歯科検診の結果報告書に基づいて日常的なケアを行い、保護者や教員も児童生徒の歯・口の健康に関心を持ち、適切な支援や指導を行うことが重要です。
そして定期的に歯科医院で検診を受けることで、治療や専門的な処置を行い、口内環境を健全に保つことができれば、学校歯科検診でも良い結果を得ることにつながります。
学校歯科検診と歯科医院の定期検診は、いわばお子さんの歯を守る両輪であり、両方をしっかりと活用することで、長期間にわたり口内環境を健康に保てるようになります。学校歯科検診の結果報告書で、歯科医院の受診を勧められた際も、安心して町田歯科にご相談ください。