インプラントは、ご自身の歯と同じような感覚で噛むことができるうえ、インプラントの手術リスクと安全性のコラムでもお話ししたように、成功率90%以上という安全性の高い治療法として、広く普及しています。
ただ、インプラント治療の成功率はとても高いものの、インプラントは一度埋入したらメンテナンスフリーというわけではありません。埋入したインプラントを長持ちさせるためには、日頃のきちんとしたケアが大切なのです。
以前、インプラント治療後の噛み合わせ調整についてお伝えしましたが、今回は、インプラント治療を行った後、日頃から心がけていただきたいケアについて、解説したいと思います。
ご自身で行う歯磨きによるセルフケア
冒頭でも触れましたが、自分の歯のように噛むことができるインプラントは、第二の歯、あるいは第二の永久歯などとも呼ばれます。言うなれば自然の歯と同様の存在なので、インプラントのケアもまた、自然の歯と同じように行うのが基本となります。
歯を清潔に保つ一番のケアは、やはり歯磨きです。歯の表面についているプラーク(歯垢)は、インプラントにとっても大変有害なので、きれいに取り除かなくてはなりません。
インプラントの歯磨きの方法
上述のとおり、インプラントも自然の歯と同様に、歯磨きをするのがケアの基本になりますが、インプラントの歯磨きは、より丁寧に行っていただく必要があります。下記の手順をご参考になさってください。
- 普段お使いの歯ブラシで、インプラントも自然の歯と同じように磨いてきれいにする。
- インプラントの付け根近辺を、歯ブラシを斜めに当てて細かく動かして磨く。
- 歯間ブラシやデンタルフロスを使って、インプラントと歯の間、もしくはインプラント同士の間をきれいに磨く。
- インプラントの細かな部分は、ワンタフトブラシという毛先がコンパクトな歯ブラシを使って磨く。
ポイントになるのは、2.以降です。普段の歯磨きの手順に加え、歯間ブラシやデンタルフロスも併用するのが良いでしょう。隙間が狭い箇所はデンタルフロス、広い箇所は歯間ブラシが使いやすいですね。
デンタルフロスや歯間ブラシについては、使っていますか?デンタルフロスや歯間ブラシのコラムで詳しく解説していますので、併せてご参照ください。
ワンタフトブラシ(タフトブラシともいいます)は、上の写真のような小さな毛先の歯ブラシです。通常の歯磨きだけでなく、これらの道具も使いつつ、インプラントを細かく丁寧に磨いてください。
電動歯ブラシを使う
普通の歯ブラシではなく、電動歯ブラシでの歯磨きもおすすめです。現在、主流の電動歯ブラシは、音波式と回転式です。
いずれの電動歯ブラシも、普通の歯ブラシよりも細かく動き、短い時間で効率良く歯磨きできるので、インプラントの歯磨きにも適しています。
歯磨き粉は何が良い?
基本的に、インプラント治療を受けた後の歯磨きにも、市販の歯磨き粉(歯磨き剤)は使用できます。ただし、ホワイトニング効果のあるものには注意しましょう。
フッ素入り歯磨き剤
フッ素は虫歯予防効果がとても高いことで知られています。最も手軽にフッ素を歯に作用させられるのが、フッ素入り歯磨き剤です。
現在、市販されているフッ素入り歯磨き剤のフッ素濃度は、1500ppm(製品濃度は1450ppm)が最大です。この濃度ならインプラントに悪影響を与えることはありませんし、フッ素濃度の高さと相まって虫歯予防効果も高いので、インプラントへの使用もおすすめです。
歯周病用歯磨き剤
歯周病ケアを重視した歯磨き剤には、歯周病菌の殺菌効果や、歯肉の炎症を抑える効果、歯肉の血行促進効果などのある薬効成分が配合されています。
インプラントの寿命に影響するのが、インプラントの歯周病であるインプラント周囲炎です。他の歯への負担が少ないインプラントのコラムでもお伝えしたとおり、インプラントは天然の歯と同様、ケアを怠れば歯周病になってしまいます。
インプラント周囲炎を防ぐためにも、歯周病用歯磨き剤での歯磨きはおすすめと言えるでしょう。
ホワイトニング用歯磨き剤
市販されている歯磨き剤の中には、ホワイトニング効果を謳う歯磨き剤もあります。ただ、ホワイトニングといっても、歯科医院で行うホワイトニングとは違い、歯を漂白する働きはありません。
市販のホワイトニング用歯磨き剤は、研磨剤や汚れ落とし用の薬効成分により、歯の表面についている着色汚れを取り除くことを目的としています。
インプラントを受けて間もない頃の歯肉は弱いので、研磨剤を多く含む歯磨き剤は、歯肉への刺激が強く、おすすめできません。
町田歯科では、歯のクリーニングのページでお伝えしているように、患者さんそれぞれに合った歯磨き粉もご提案しますので、どんな歯磨き粉が良いか迷われる方は、お気軽にお問い合わせください。
洗口液(マウスウォッシュ)は?
洗口液は、マウスウォッシュとも呼ばれるうがい薬で、歯磨きの後に使います。普段から使っている方もいらっしゃるかもしれませんね。
薬効成分の種類や、アルコールの有無によって特徴に差がありますが、市販の洗口液ならインプラントに悪影響を及ぼすことはまずないので、ご自身に合った洗口液(マウスウォッシュ)をお使いになって構いません。
歯科医院でのケア
ご自身でのケアとともに忘れてはいけないのが、プロフェッショナルケアと呼ばれる歯科医院でのケアです。
歯科医院での歯磨き
歯科医院では、歯科医師や歯科衛生士がお口や歯の状態をチェックし、磨き残しがあるかどうかをチェックします。
どれだけ丁寧に磨いていても、ご自身では行き届かないところがあるものです。そこで、専用器械とペーストを使って、磨き残しがある箇所をきれいに磨きます。
歯石の除去
歯の表面のプラーク(歯垢)を放っておくと、やがて歯石が付着するようになってきます。
歯石の表面はとても凸凹としているので、歯やインプラントを悪くしかねない細菌の温床になりますが、歯石は普通の歯磨きでは取り除けません。
そこで歯科医院では、スケーラーという専用の器械を使って、歯石を取り除きます。歯石の除去もプロフェッショナルケアの一つです。
これら歯科医院の専用機械を用いたプロフェッショナルケアは、PMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)と呼ばれます。詳しくはPMTCってなに?のコラムで解説しておりますので、興味のある方はご参照ください。
正しい歯磨き方法の説明
歯の形や大きさ、歯並びは人それぞれ異なります。このため、歯の磨き方だけでなく、ご自身に合った歯ブラシや歯間ブラシ、デンタルフロスも一人一人違うものになります。
これは人口の歯であるインプラントでも同様です。インプラントのプロフェッショナルケアでは、患者さん一人一人に合ったおすすめの歯ブラシや口腔ケア用品を提案させていただき、それらを使った正しい歯磨きの方法をご説明します。
歯科医院を受診する頻度は?
インプラントのケアのための受診間隔は、患者さんによってそれぞれ異なりますが、3~6ヶ月くらいが一般的と言えるでしょう。
インプラントも本来の歯と同様のケアを忘れずに
今回は、インプラント治療後のケアについてお話ししました。町田歯科では、歯のケアやメインテナンスについて、様々な情報をお伝えしていますが、併せて読んでいただくと、自然の歯と同様のケアがインプラントにも必要だとお分かりいただけるのではないでしょうか。
治療後のケアは、インプラントを長持ちさせるためにとても大切です。インプラントのケアは、歯を長持ちさせるセルフケアとプロフェッショナルケアのコラムで解説しているように、ご自身で行うセルフケアと歯科医院で行うプロフェッショナルケアの二人三脚が基本となります。日頃のセルフケアに加え、歯科医院も定期的に受診して、ぜひインプラントを清潔に保つようにしてください。
町田歯科は、インプラント治療の専門医が在籍し、治療後のケアにも積極的に取り組んでいます。インプラント治療を行った後、どのようにケアしていくのが良いのか、ご不明な点やご質問がある方は、町田歯科にお気軽にご相談ください。