歯の治療中に「口の中に入ってくる細長い器具は何だろう」と、疑問に思ったことはありませんか?
これは「バキューム」と呼ばれる吸引器で、唾液や歯を削る際に発生する水、粉塵、空気中に漂うエアロゾルなどを吸い込むために使用します。
そうすることで、術者の視界の確保と院内感染のリスクを減らし、同時に、口腔内に水が溜まる不快感や息苦しさも軽減しています。
普段はあまり注目されない機器かもしれませんが、安全かつスムーズな歯科治療における大切な役割を果たしています。
今回は、そんな歯科治療に欠かせない吸引器「バキューム」の役割を分かりやすくお伝えします。
バキューム(吸引器)とは何か

冒頭でも触れたように、歯科治療で使用されているバキュームは、唾液や水、歯の削りカスや飛沫、血液などを効率良く吸い取るため器具です。
特に虫歯治療や歯石除去は、注水しながら治療を進めるため、水や唾液を素早く吸引するバキュームは欠かせません。
歯科医院では、口腔内の水分を吸い取る器具をバキューム、またはサクションと呼びます。
一般的には、細いタイプを「サクション」、より吸引力が強く一度に大量の水を吸い込む太いタイプを「バキューム」として呼び分けていますが、実際には名称や使い方は医院によって異なります。
バキュームの役割 ① 唾液・水を吸い取って治療をしやすくする
では、より具体的にバキュームの役割についてお話ししていきましょう。

歯科治療では、歯を削る際に、ドリルの発熱を抑えるために注水しながら治療を進めますが、吸引を行わないと口腔内に水が溜まり、歯科医師の視界が遮られ、治療の妨げになってしまいます。また、患者さんの不快感やストレスにもつながります。
加えて、治療で使用する詰め物や接着処置は水分の影響を受けやすいデリケートな材料が多く、唾液や水分の侵入を防ぐように徹底することは、治療の成功率にも関わってきます。
このように、バキュームによる吸引は単純に水分を吸い取るだけでなく、治療の精度を高めるための重要なプロセスと言えるでしょう。患者さんは吸引時に違和感を感じるかもしれませんが、円滑に治療を進めるための大切な処置と、ご理解いただけたらと思います。
バキュームの役割 ② 飛沫・エアロゾルを吸引して感染リスクを下げる
歯科治療では、ハンドピースや超音波スケーラーなどの器具を使う際、水しぶきや飛沫、さらには微細な粒子も発生します。
こうした目で見えにくい細かな粒子は「エアロゾル」と呼ばれています。唾液や血液などが含まれる可能性があるため、歯科医療では感染対策の観点から注意が必要とされています。
厚生労働省やCDCからも提言

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)(※1)も、歯科で使用される一部の器具によって、飛沫やエアロゾルを含むスプレー状の飛散物が発生することがあると伝えています。
また、厚生労働省の歯科感染対策指針でも、診療室内の環境はバクテリアルエアロゾルの飛散によって汚染される可能性があることが示されており、歯科診療における吸引や標準予防策の大切さが説かれています。
このような背景を踏まえ、日本歯科医学会の新たな感染症を踏まえた⻭科診療ガイドラインでも、COVID-19以降(※2)、従来の標準予防策の徹底に加え、感染症対策に配慮した機器の重要性が高まりました。
(※1)CDC:Best Practices for Personal Protective Equipment
CDC:Standard Precautions | Dental Infection Prevention and Control
(※2)厚生労働省:新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行後の対応について
感染リスクの低減にもバキュームが効果的

上述のように、治療中に発生する飛沫やエアロゾルをできるだけ速やかに吸引することは、患者さんとスタッフ双方の感染リスク低減につながると考えられています。
特にコロナ禍以降は、歯科医院の感染対策への関心が高まり、バキュームの役割が以前より注目されるようになりました。
町田歯科では、患者さんが安心して治療を受けていただけるよう、クリーンな院内環境を徹底し、クラスB滅菌器や口腔外バキュームの導入など、様々な感染予防対策を行なっておりますので、感染症対策が気になる方も、安心してご来院ください。
バキュームの役割 ③ 削りカス・薬液を口内に残さないようにする

歯を削る処置では、目に見えにくい細かな削りカスや粉塵が発生します。これらが口の中に残ると不快感を感じやすく、患者さんは口をゆすぐまで違和感が続いてしまいます。
バキュームはこうした削りカスや粉塵をその場で吸い取り、お口の中の不快感を瞬時に取り除く効果もあります。
また、洗浄液や薬液が誤って喉へ流れ込むと、治療中にむせてしまい危険ですが、バキュームを適切に使用することで誤嚥(ごえん:飲み込んだ物が誤って気管に入ってしまうこと)を回避できます。
患者さんからすると、「水分を吸っている」だけとお感じになるかもしれません。しかし実際には、治療を阻害する要因や不快感の原因となるものを除去し、安全と快適な治療環境を支えているのです。
バキュームの役割 ④ 患者さんの「水が溜まって苦しい」を軽減

歯科治療中に「口の中に水が溜まって苦しい(※)」と感じた経験はありませんか?
特に、仰向け姿勢が苦手な方や鼻呼吸がしづらい方、緊張しやすい方は、口腔内の感覚が敏感になる傾向があります。
このような息苦しさを減らすうえでも、バキュームは重要です。歯科治療では、適切な位置に吸引器を当て、治療の流れに合わせて口腔内の水をこまめに吸引します。そうすることで、患者さんの不快感を軽減しています。
また、治療の際は、歯科医師、歯科衛生士、歯科助手が連携し、患者さんの反応を見ながら吸引の位置やタイミングを調整しています。つまり、治療の快適さは術者のバキュームテクニックよって左右される部分があるとも言えるでしょう。
(※)治療中に口腔内に水が溜まるのが苦手という方は、提携医院である札幌ポラリス歯科の歯科治療中に、お口に水が溜まるのが苦手な方へのコラムも併せてご参照ください。
治療中にストレスを感じたときは遠慮なく伝えましょう

歯科治療中に痛みや息苦しさを感じても、「少しだけだから大丈夫」と、我慢する方は多いのではないでしょうか。
しかし、お気になさらなくても構いません。治療中に痛みやストレスを感じる時は遠慮せず、手を挙げるなどして伝えるようにしてください。
歯科医院のスタッフ側は、患者さんの反応を読み取り、治療の手を止める、吸引の位置を調整する、体勢を少し起こす、声かけを増やすなど、痛みやストレスを軽減できるように対処(※)してくれます。
また、あらかじめ「口の中に水が溜まるのが苦手です」「歯科治療が苦手です」などと伝えておくと、患者さんの心身への負担に配慮した対応をしてくれるでしょう。気になることや不安があるときは、担当の歯科医師へ遠慮なく相談するようにしてください。
バキュームは歯科治療と患者さんの安心を支える大切な機器

お伝えしてきたように、歯医者で使うバキュームは、水を吸い取るための単純な器具ではありません。
医師が精密な処置を行える環境を整えたり、飛沫やエアロゾルを吸引して院内感染を防いだり、さらには、患者さんの口腔内に水分が溜まる不快感の軽減にも役立っています。まさに、快適な治療を支える大切な機器と言えますね。
歯科医院には、見慣れない専用機器が並ぶので、ドキドキする方もいらっしゃるかもしれませんが、治療中に使用される器具の役割が分かると、歯科治療への不安も少し和らぐのではないでしょうか。歯医者が苦手な方にとって、バキュームの役割を知ることは前向きに治療を受けるための一歩になるかもしれませんね。
町田歯科・矯正歯科では、綿密なカウンセリングを通じて、患者さんからのご質問に丁寧にお答えし、徹底して痛みやストレスの少ない治療を心がけておりますので、歯について気になることがある方は、町田駅すぐそばの町田歯科へお気軽にご相談ください。








