ゴールデンウィークの前半が終わりましたが、皆さんはいかがお過ごしですか。旅行や行楽などにお出かけの方も多いことでしょう。何かと飲食の機会も増えると思いますが、コラムでもお伝えしたように、歯のケアも忘れないようにしてくださいね。
さて、そんなゴールデンウィーク中に観光地に出かけると、外国人の方を目にする機会も多いのではないでしょうか。今は空前の円安ですから、インバウンド需要が活発です。外国の方からすると、日本は正しく、何もかもが安い国でしょう。
しかし当然、日本人からすれば、海外に行けば何もかもが高額ということです。では、歯の治療費は、日本と諸外国でどのくらい違うのでしょうか?
今回はそんな海外での歯科治療の料金について、実際の治療例を元にお話ししたいと思います。
日本の治療費と外国の治療費の比較
歯石除去(スケーリング)
まず、歯のメインテナンスや予防歯科でよく行われる歯石の除去から比べていきましょう。
歯周病は治療が可能のコラムでもお伝えしたように、食べかすが長く歯の表面にとどまると、口内細菌の温床となってしまいます。この細菌が塊のようになったものがプラーク(歯垢)であり、プラークが唾液中のカルシウムと結合し、石のようになったものを歯石と呼びます。
プラークや歯石は、ご自身の歯磨きだけで完全に落とすのは難しいため、歯科医院の専用機器により、定期的に除去する必要があります。
では、その費用を各国と比較してみましょう。
※日本での治療費を1として比較
アメリカ | 21.0倍 |
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イギリス | 3.2倍 |
ドイツ | 8.6倍 |
フランス | 3.2倍 |
韓国 | 3.0倍 |
アメリカは突出して高額ですが、ドイツも日本の8.6倍。イギリス、フランス、韓国はほぼ同じ金額とはいえ、それでも日本の3倍です。韓国は美容外科などは安価な印象もありますが、歯科はそうではありません。最高額のアメリカでは、日本の数年分に相当する治療費がかかります。
コンポジットレジン(CR)充塡
コンポジットレジンは、プラスチックとガラスの微細な粒子からなる合成樹脂です。虫歯や歯の欠損部分を修復する際に、コンポジットレジンは大変よく用いられます。
コンポジットレジンは、白い歯に治せるセラミック治療のコラムでお話しした各種セラミック材料ほどではないものの、自然の歯に近い見た目を再現することができ、また、保険適用なので治療費が安価なこともメリットです。
こちらも日本の治療費を1として比べてみましょう。
アメリカ | 9倍 |
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イギリス | 4.2倍 |
ドイツ | 0.92~5.0倍 |
フランス | 1.5~3.6倍 |
韓国 | 3.6倍 |
やはりアメリカが高額ですが、ドイツは費用の幅が大きい印象です。その他の国はおおよそ3~4倍程度ですが、国によってかなりばらつきがあります。
抜歯
いつまでも自分の歯を維持できるのが理想ではありますが、虫歯がひどい場合や、生え方が良くない親知らずなど、抜歯せざるを得ないこともあります。
実は、抜歯は立派な外科処置の一つです。治療器具も滅菌で再利用できるとはいえ、器材を揃える初期コストもかかりますし、また術後出血、薬疹、術後感染、あご先や下唇の神経障害など、様々なリスクも伴います。そのため、医療訴訟の多い国では、損害賠償保険などへの支払いもあり、医療費も高くなります。
抜歯についても日本の治療費を1として比較してみると、
アメリカ | 18倍 |
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イギリス | 4.9倍 |
ドイツ | 1.1倍 |
フランス | 2.4倍 |
韓国 | 1.1倍 |
ドイツや韓国の抜歯の治療費は日本と変わりませんが、訴訟大国でもあるアメリカは突出しています。
総入れ歯(総義歯)
歯を失った場合の選択肢としては、インプラントやブリッジ、義歯(入れ歯)などがあります。特に全ての歯がない場合は、総入れ歯が候補に挙がりますが、入れ歯を作る際は、患者さんそれぞれに合ったものをオーダーメードで製作することになります。これにはどうしても手間や時間がかかります。
総入れ歯を製作する費用についても、日本を1とすると、
アメリカ | 8.0倍 |
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イギリス | 1.6倍 |
ドイツ | 5.3倍 |
フランス | 5.0~10.0倍 |
韓国 | 6.3倍 |
イギリスは日本の費用に近いものの、その他の国はだいぶ高額になることが分かると思います。日本の歯科技工士の技量はとても高いので、もっと評価されても良いかもしれませんね。
日本の歯科治療が海外より安いのはなぜ?
健康保険の適用
日本の歯科治療費が海外より安価なのは、何よりも健康保険が存在するからです。日本では国民健康保険や私的な歯科保険があり、一部の治療費用がカバーされます。このような保険の適用範囲が海外の歯科治療に比べて広い場合、日本の治療費はずいぶんと安くなります。
日本の歯科治療のレベルは高い
他国と比べて治療費が安いにも関わらず、日本の歯科医療は世界的に高い評価を受けており、高品質な技術と設備が整っています。特に高度な治療を受ける場合、日本の歯科医療を選ぶことが安心につながるケースがありますので、日本に在住するのは大きなメリットと言えるでしょう。
逆に海外での歯科治療の方が安い場合とは?
ではあらゆる歯科治療において、日本の治療費は安いのかというと、そうではありません。
例えば発展途上国では人件費や生活コストが低いので、それが治療費用の低さに反映されることがあります。また、 自国通貨の価値が日本円に比べて低い国で治療を受ける場合も、日本よりも費用が安くなるでしょう。
海外での歯科治療のメリットとデメリット
海外での歯科治療は興味深い選択肢ですが、メリットとデメリットの両方があります。
海外での歯科治療のメリット
高品質な治療を受けられる
一部の海外の歯科医療施設は、世界的に最新の技術を採用し、高品質な治療を提供しています。技術の進歩や設備の近代化が進んでおり、より先進的な治療を受けることができます。
特殊な治療の提供
同じく海外の一部の歯科医療施設は、特殊な治療や技術も提供しています。これらの施設を利用することで、日本にはない治療を受けられる場合があります。
待ち時間の短縮
一部の国では、歯科は完全予約制のため、治療の待ち時間が短くなり、よりスピーディな治療が提供されています。
費用の削減
先述のとおり、特に発展途上国では、治療を受けるための費用が国内よりも格段に安くなる場合があります。ただし、治療環境の衛生面が悪いなどのリスクもありますので、渡航国によってはあまりおすすめできません。
観光と組み合わせた治療も
直接的な治療のメリットではありませんが、海外歯科治療を観光と組み合わせることもできます。治療を受けながら、他の国や文化に触れる機会を得るということも可能です。
海外での歯科治療のデメリット
コミュニケーションが難しい
言語や文化の違いがあるため、渡航国の母国語に習熟していないと、コミュニケーションのハードルは高くなります。特に医療は専門的な内容になるため、治療の目的や期待する成果を正確に伝えることが難しいのはデメリットです。
医療品質の担保
渡航先の歯科医療施設によっては、医療品質の信頼性に問題があることがあります。一部の施設では、衛生基準や専門家の技術水準が日本とは異なっています。
保証やアフターケアの不足
治療後の保証やアフターケアが不十分な場合もあります。帰国後に問題が生じた場合、遠隔地にある施設との連絡や保証の利用は困難になってしまいます。
渡航費用や時間がかかる
先ほどメリットとして治療費が安価になることを挙げましたが、海外に治療を受けに行くためには、当然渡航費用がかかります。特に遠方や渡航が難しい国の場合は、治療費は安くても、旅費が高額になってしまいます。また、治療のための日数も多く確保する必要があります。
海外での歯科治療は、メリットとデメリットをよく勘案して
今回は、海外での歯科治療と日本の歯科治療について比較してみました。海外での歯科治療を検討する際には、メリットとデメリットをよく考慮し、自身のニーズや優先事項に合った選択をすることが重要です。
日本の歯科治療は、海外と比べると安価でありながら高品質
また、今回お伝えしたように、日本の歯科医療の技術は大変高いレベルでありながら、為替の問題を加味しても、他国と比べると十分安価であると言えます。その恩恵を受けつつ、歯科医院を定期的に受診し、しっかりと歯の健康を守るよう、日頃から心掛けてくださいね。