冬は風邪が流行る時期…インフルエンザが猛威を振るうニュースは多くの方が耳にしたでしょう。町田の感染症週報を見ても、11月に入り、一気にインフルエンザやARI(急性呼吸器感染症)の患者数が増えているのが分かります。皆さんも気をつけてくださいね。
さて、そんな風邪をひいた時や疲れている時、ストレスが溜まっている時などに「何となく歯茎が腫れている」と感じた経験はありませんか?
これは単なる偶然ではありません。実は、風邪などで免疫力が低下すると、お口の中では細菌が増殖しやすい環境が生まれています。そのため、普段は特に症状がなくても、急に歯茎が腫れたり出血したり、むず痒くなることがあるのです。
今回は風邪という身近な体調不良が、なぜ歯茎の腫れを引き起こすのか、そのメカニズムや対策についてご紹介します。
そもそも風邪とは何か
風邪は、鼻から喉の辺りの粘膜にウイルスが感染することで起こる症状で、正式には風邪症候群と呼びます。
咳や鼻水、くしゃみ、発熱などの症状が伴いますが、その多くは重症化のリスクが少なく、数日〜1週間程度で自然に回復します。
身体の変化

風邪をひくと、私たちの身体の中ではウイルスを排除するために免疫系が働き出し、その結果として様々な症状が出てきます。
例えば、咳や痰は、体内から異物を追い出そうとする防御反応です。発熱は、体内にウイルスが侵入したことを伝達すると同時に、免疫機能を高めるために起こります。
体力の低下

ウイルスを排除するために炎症反応を起こしたり、熱を出したりするのは、実はかなり体力を使います。
余談ですが、風邪をひくと頬がこけるのは、身体のエネルギーの貯蔵庫である脂肪からウイルスと戦うためのエネルギーを取り出した結果です。単なる風邪であっても、回復には多くの体力を必要としているんですね。
風邪をひいた時に歯茎が腫れる理由
では、今回のテーマである風邪を引いた時に歯茎が腫れる理由についてお話ししていきましょう。
免疫力の低下

前述のように、風邪をひくと身体から風邪のウイルスを排除するために免疫系が活発に動きます。
免疫系は風邪ウイルスへの対応に注力するため、口腔内の細菌の活動を抑えることが難しくなります。その結果、口腔内の細菌が歯茎にダメージを与えやすくなり、歯茎の腫れを引き起こすのです。
唾液の減少

お口を潤すだけじゃない!唾液の持つすごい働きとは?のコラムでも解説したとおり、唾液には、口腔内の食べかすを洗い流す洗浄作用や細菌の活動を抑える抗菌作用、傷を治すのを助ける作用など、さまざまな働きを担っています。
ところが、鼻が詰まって口呼吸になると、唾液が蒸発して口の中が乾燥します。その結果、抗菌作用や自浄作用など、唾液の有益な機能が低下してしまいます。
これによって、口腔内の細菌が増加し、歯茎の腫れや痛みを招くことになります。
傷を治す力(治癒力)の低下

歯茎が腫れると、通常は「健康な状態に戻そう」と、傷を治す細胞が集まります。しかし、風邪によって体力が落ちると、歯茎を治す働き(治癒力)も低下してしまいます。
本来、口腔内は唾液に含まれるタンパク質の働きにより、どんな傷でも早く治るのが特徴です。しかし、風邪をひいている時は唾液の働きも弱っていますから、炎症のスピードに治癒の働きが追いつけず、結果的に歯茎が腫れてしまうのです。
風邪で歯茎が腫れた時のセルフケア
続いて、風邪をひいて歯茎が腫れた時、ご自身でできる対処法についてご紹介します。風邪で体調がすぐれない時は、無理をして歯科医院に行くより、まずはセルフケアから取り組むようにしてください。
歯磨き

口腔内を清潔に保つことが歯茎の腫れを引かせる第一歩です。まずは丁寧な歯磨きを心がけましょう。
歯茎から出血したり、歯ブラシの刺激で痛みが出る場合もありますが、無理のない程度に歯磨きを続けてください。「ふつう」の硬さの歯ブラシが痛いなら、「やわらかめ」の歯ブラシに変えるのも良いでしょう。
栄養補給

ウイルスと戦って消耗した体力を回復させるのは、栄養価が高い食事が欠かせません。しかし、風邪をひくと食欲が低下しますし、喉が痛くなり食べ物が飲み込みにくくなることもあるでしょう。
そんな時は、お粥やうどん、ゼリー飲料などの消化が良くて栄養価が高い食事を摂りましょう。白湯やスポーツ飲料などで水分を補給することも大切です。
休養

風邪をひいて体調が優れない時は、よく寝て体を休めましょう。睡眠中は免疫細胞が活発になり、ウイルスを排除しようとします。
なるべく体を動かすことは控えて身体を休めるのも、体力を回復させるためには必要です。
うがい

殺菌成分が含まれている洗口液でうがいをすることを心がけてください。細菌の繁殖を抑えられます。
また、うがい薬がない時は、水道水のうがいでも効果はあるので、しっかりとうがいをしてください。
風邪によって歯茎が腫れた時の歯科医院でのケア
セルフケアだけでは歯茎の腫れが引かず、むしろ痛みが強くなってきた…そんな時は、歯科医院を受診しましょう。もしかすると、他の口腔疾患が隠れてるサインかもしれません。
まずは風邪を治すことが優先ですが、体調が整った段階でかかりつけの歯科医院を受診しましょう。
抗菌薬

抗菌薬は風邪のウイルスに対しての直接効果はありませんが、口腔内の細菌には有効です。
歯茎の腫れが軽度の場合は、歯磨きだけで十分対応できます。しかし、歯茎の腫れが強い場合、症状が長引く場合は、抗菌薬を使って原因となる細菌の活動を抑えるようにします。
歯のクリーニング(PMTC)

歯茎が腫れている場合、歯科医院での歯石除去とPMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)による歯のクリーニングが非常に効果的です。
歯磨きでは取り除くことが難しい奥歯や歯間、歯周ポケット内に存在する歯垢や歯石を徹底的に除去することで、歯茎が引き締まり、炎症が改善されます。セルフケアの歯磨きと比較して、高い効果が見込めるでしょう。
風邪が流行るシーズンはお口の健康にも気をつけて

今回は風邪をひいて歯茎が腫れる原因と、その対処法などについて解説しました。
風邪をひいてしまった際は、まずはしっかりとセルフケアをすることを考えてください。ただし、セルフケアだけでは歯茎の腫れが引かず、痛みが長引いている場合は、体調の回復を待ってから歯科医院で相談するようにしましょう。
町田歯科・矯正歯科では、一般的な歯科治療だけでなく、患者さん一人ひとりのお口のトータルケアを重視しています。まだまだ寒さが強く、風邪をひきやすい時期ですので、歯茎の腫れや痛み、出血など気になる症状がございましたら、町田駅すぐそばの町田歯科へお気軽にご相談ください。








