皆さんはラバーダムという言葉を聞いたことはありますか?
正直あまり聞きなれない方が多いと思います。
ラバーダムは、歯の治療時にお口に被せるゴムのマスクのようなものです。お口の中にゴムのシートを装着し、治療する歯だけを露出させるもので、ラバーダム防湿と呼ばれます。
ラバーダム防湿は、特に根管治療、つまり歯の神経の治療には不可欠です。今回は、ラバーダム防湿とはどのようなものなのか、なぜ歯の神経の治療に必要なのかについてご紹介します。
ラバーダム防湿とは?
ラバーダム防湿の目的
写真をご覧になると分かるとおり、お口の中をラバーダムがすっぽりと覆っています。なぜこのような処置をするのでしょうか?
そもそものラバーダム防湿の目的について、最初にわかりやすく列挙しましょう。
- 治療する歯に唾液が流れるのを防ぐ
- 治療する時に舌が邪魔をしたり、機械が舌や粘膜に当たるのを防ぐ
- 治療器具が口の中に落下するのを防ぐ
- 治療に使用する薬剤が口の中に流れるのを防ぐ
このように、唾液や薬剤、歯科用の機械や器具などから治療する歯を守るのが目的です。
ラバーダムはどのように装着する?
ラバーダム防湿では、歯にクランプと呼ばれる金属の器具を付け、器具をかけた歯が露出するように、お口にゴムのシートをかぶせます。お口の中に、ゴムのシートを膜のように張ることでダムを作ることから、ラバーダムと呼ばれます。
ゴムのシートはラテックスが含まれている場合があります。ラテックスフリーのものもあるので、アレルギーがある方は事前にご相談ください。
ラバーダム防湿のメリット
精度の高い治療
ラバーダム防湿の一番のメリットは、とにかく精度の高い治療ができることです。
神経の治療だけでなく、詰めものや被せものを付ける時も、唾液が混ざらないようにしっかりと歯を乾燥させることは、歯科治療においてとても大切なことです。
ラバーダム防湿をしていない状態だと、特に下の歯の治療の場合は、唾液を完全に排除することは難しいことも多いのです。ラバーダム防湿により、治療する歯をしっかり露出させ、唾液に汚染させないことで精度の高い治療が可能になります。
安全な治療
歯科治療では、様々な器具や薬剤を使用します。ラバーダム防湿を行うことで、これらの器具・薬剤がお口の中に落ちることを防ぐことができます。
また、歯を削る時に顔や舌が動いてしまうと、機械でお口の中の粘膜や舌を傷つけてしまう恐れがあります。ラバーダムで舌や周囲の粘膜を排除することで、このようなリスクを減らし、安全な治療が行うことが可能になります。
ラバーダム防湿のデメリット
準備に少し時間がかかる
ラバーダム防湿をする際は、歯に器具をかけてゴムのシートを装着するため、時間が若干かかります。慣れていると1~2分くらいですが、歯の形によっては器具かかけにくい場合があります。
特に根管治療をしている歯で、残っている歯が少ない場合は、器具をかけやすいようにプラスチックの材料で歯を補強してから、ラバーダム防湿をすることもあります。
鼻が詰まっていると、息苦しく感じることがある
上の写真からもお分かりのとおり、ラバーダム防湿をすると、お口をすっぽりと覆われるため、口で息がしにくくなります。
このため、鼻が詰まっていると息苦しく感じる場合もあります。鼻炎などで鼻づまりがあり、心配な方は事前にご相談ください。
ラバーダム防湿が神経の治療(根管治療)で必要な理由
冒頭でも触れましたが、精度の高い根管治療のために、ラバーダム防湿は不可欠な処置です。以下ではより深掘りして、なぜ歯の神経の治療にラバーダム防湿が必要なのか、その理由をご説明しましょう。
唾液による細菌感染を防ぐ
虫歯が深くなり、神経まで達すると、神経が細菌感染して炎症を起こします。根管治療とはこの感染した神経を取り、根の中をきれいにする治療です。
一度神経の治療をした後も、根の中に細菌がいると、根の先の組織が炎症を起こし、周囲の骨を溶かす根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)と呼ばれる病気になります。
口の中の唾液には、たくさんの細菌が含まれています。このため治療中に唾液が混ざると、いくら治療しても根の中の細菌を減らすことはできません。根管治療を成功させるためには、滅菌された清潔な器具の使用と唾液の排除が不可欠なのです。
薬剤が口の中に流れるのを防ぐ
根管治療では、根の中を殺菌するために強い薬剤を使います。これがお口の中に流れると、粘膜がただれたり炎症を起こす可能性があります。
ラバーダム防湿をしていない環境だと、吸いきれなかった薬剤がお口の中に漏れてしまうことがあるため、安全のためにラバーダムが必要なのです。
ラバーダム防湿はどれくらい行われている?
お伝えしてきたとおり、ラバーダム防湿は歯科治療において非常に大切なものです。海外では、特に根管治療の際は一般的に行われていますが、実は日本ではあまり行われていないのが現状で、日本での普及率は5%以下とも言われています。
その理由の一つとして、保険治療ではラバーダム防湿の点数が設定されていないことが挙げられます。つまり、ラバーダム防湿にかかる費用は、クリニック側の負担になってしまうのです。また、ラバーダムに慣れていないと息苦しく感じたり、窮屈に感じてしまい、ラバーダム防湿を嫌がる患者さんもいらっしゃいます。
ラバーダム防湿は確かな治療を行う姿勢の表れ
しかし、精密で安全な治療にはラバーダム防湿はとても重要なものです。ラバーダム防湿を行うということは、それだけ「しっかりとした治療をしようとしていることの表れ」でもあります。
最新の設備と治療を提供することを心がける町田歯科では、積極的にラバーダム防湿を使った診療を受けていただきたいと考えています。もちろん、しっかりとカウンセリングをし、わかりやすい説明を行いますので、ラバーダム防湿についてご不明な点やご質問がある方は、お気軽にお問い合わせください。