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虫歯治療

歯の神経を再生する注射型ハイドロゲルとは?先進の歯髄再生治療を解説

歯科医院で「虫歯が神経まで達しているので、神経を抜きましょう」と伝えられたことはありませんか?

たしかに神経を抜けば痛みは治まるのですが、歯の神経(歯髄:しずい)を失うと、その歯は以前よりも弱くなってしまいます。神経を抜いた歯は、栄養が行き渡らなくなるため、脆くなりやすく、将来的に割れたり折れたりするリスクも高くなります。

「何とかして自分の歯で長く過ごしたい」「神経を取らずに済む方法はないのだろうか」。これらは多くの患者さんの切なる願いといえるでしょう。

そんな切実なご要望に応える手段として、いま歯科業界で注目を集めているのが歯髄再生治療です。なかでも、注射型ハイドロゲルという新素材を活用した技術が、再生の精度を高める可能性を秘めており、研究が進められています。

そこで今回は、歯髄再生治療の基礎知識から注射型ハイドロゲルの仕組み、メリット・デメリットなどについて解説します。

そもそも歯の神経(歯髄)とは?

歯の痛みのほとんどは、前述の生理的疼痛に分類されます。虫歯などが原因となって、歯髄(しずい:歯の神経)に刺激が加わることで生じます。

歯の内部にある歯髄(しずい)は、痛みを感じるだけの組織ではありません。歯を健康に保つために欠かせない4つの役割を担っています。

1. 血管(栄養供給) 歯の主成分である象牙質に水分と栄養を送り、しなやかさを保ちます。
2. 神経(感覚) 強い力がかかった時や、異常が起きた時に痛みとしてサインを出します。
3. 免疫(防御) 細菌が侵入してきた際、白血球などを送り込んで感染を防ぎます。
4. 修復(象牙質形成) 刺激に対して、自ら新しい象牙質を作って壁を厚くします。

これまでの根管治療と神経を抜くことの代償

根管治療を成功させるポイント:汚染組織の完全な除去

これまで、深い虫歯に対する標準的な治療は根管治療(こんかんちりょう)でした。

これは感染した歯髄(神経)を取り除き、空になった歯の根っこの中(根管)をきれいにしたうえで、薬剤や人工物で封鎖する処置です。多くの方にとって、虫歯がひどくなった場合は、この神経を抜く根管治療を行うというイメージがあるかもしれません。

根管治療の流れ

しかし、冒頭でも触れたように、神経を抜いた歯は栄養供給を失い、脆くなりやすい状態失活歯:しっかつし)になります。数年後に歯根破折(しこんはせつ)といって根元から割れてしまうリスクが高まり、もし割れてしまうと、残る選択肢は抜歯しかありません。

つまり、抜髄は痛みの解消と引き換えに、歯の寿命を縮めるリスクを伴うのです。

歯髄再生治療とハイドロゲル

歯髄再生治療とハイドロゲル

歯髄再生とは、失われた歯髄組織を、自分の細胞の力で再び作り出すことを目指す治療法です。

歯髄を再生するためには、移植した幹細胞が根管の中で定着し、血管や神経を含む新しい組織へと成長するための「足場」が必要です。この足場材料として、いま世界の研究機関で注目されているのが注射型ハイドロゲルです。

ハイドロゲルとは、ゼリーやコンタクトレンズのように、大量の水分を含んだ網目状の物質のことです。体の組織に近い柔らかさと水分量を持つため、組織への分化が促進されやすく、細胞にとって良い環境を作り出せるのが大きな特長です。

さまざまなハイドロゲルの研究が進む

さまざまなハイドロゲルの研究が進む

歯髄再生の分野では、ゼラチンをベースにしたもの(ゼラチンハイドロゲル)や、コラーゲン系、PEG(ポリエチレングリコール)系など、さまざまな種類のハイドロゲルの研究が進んでいます。

なかでも、FGF-2(線維芽細胞増殖因子)やG-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)といった成長因子を組み合わせることで、細胞の増殖や分化をより効果的に促すアプローチに注目が集まっています。

注射器で注入できるように加工

注射器で注入できるように加工

さらに、このハイドロゲルを注射器で注入できる液状の形態(注射型・インジェクタブル)に加工する研究も進んでいます。

歯の根の内部は非常に細く複雑な構造をしているため、固形の材料では隅々まで行き渡らせることが困難ですが、注射であれば、狭く複雑な根管の中にも液状のまま流し込めるようになるわけです。

また、これが実用化すれば、歯に小さな穴を開け、注射器で注入するだけで処置が完了するため、侵襲(治療で肉体が受けるダメージ)の少ない治療を行うことにもつながると期待されています。

未来の虫歯治療はどう変わる?

現在は研究の初期段階

現在は研究の初期段階

現在、注射型ハイドロゲルを用いた歯髄再生は、主に大学病院などでの動物実験や、初期段階の臨床研究が進められている段階です。

これまでは「一度失われた歯髄は元に戻らない」と考えられてきましたが、現在では、一定の条件下で、再生の可能性を探る研究が進んでいます。

将来的なビジョン

将来は「虫歯が深いから神経を取る」のではなく、「歯髄を再生させる」という治療が選択肢の一つになる可能性が

これらの研究が臨床応用に結びつけば、将来的には「虫歯が深いから神経を取る」のではなく、「歯髄を再生させる」という治療が選択肢の一つになる可能性があります。

削って詰めるという『物理的修復ではなく、生物学的再生』へと、歯科治療は進化していく過程にあると言えるでしょう。

あなたの歯を一生ものにするために

あなたの歯を一生ものにするために

従来の治療では、神経を取り除くことで歯の寿命が縮まるリスクがありましたが、注射型ハイドロゲルを用いた歯髄再生治療は、歯を長く守ることができる可能性を秘めています。

現在は主に大学病院などで研究段階にあり、実用化に向けて耐久性や安定性などの課題があるものの、将来的には「神経を抜く」のではなく「神経を再生させる」治療が選択肢になる日が来るかもしれません。

ただし、歯髄再生治療は、今すぐにすべての方が受けられる治療ではないため、現時点で「神経を取る必要がある」と言われた場合は、MTAセメントを用いた覆髄など、神経を残すための精密治療を検討することをおすすめします。

また、やむを得ず神経を取る必要がある場合でも、当院ではマイクロスコープを使った精密根管治療を行いますので、安心してお任せいただければと思います。

町田歯科は、各分野の歯学博士や専門医が在籍し、最新の知見を取り入れつつ、患者さん一人ひとりに適した予防・治療方法をご案内いたしますので、自分の歯を長く守りたいとお考えの方は、ぜひ町田駅すぐそばの町田歯科・矯正歯科にご相談ください。

参考文献

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  • 村上伸也. (2021). 歯科における再生医療の最前線:歯周組織と歯髄の再生. 日本再生医療学会雑誌, 20(2), 145-152.
  • 吉本勝, & 佐藤利夫. (2022). インジェクタブル・ハイドロゲルを用いた組織再生スキャフォールドの開発. 歯科材料・器械, 41(3), 188-195.
  • Galler, K. M., Brandl, F., Kirchhof, S., Widbiller, M., Eidt, A., Buchalla, W., … & Goepferich, A. (2018). Enzymatically cross-linked polyethylene glycol hydrogels for personalized tooth regeneration. Biomacromolecules, 19(11), 4242-4251.
  • Kim, J. Y., Xin, X., Moioli, E. K., Chung, J., Lee, C. H., Chen, M., … & Mao, J. J. (2010). Regeneration of dental-pulp-like tissue by chemotaxis-induced cell homing. Journal of Dental Research, 89(12), 1422-1427.
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