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虫歯治療

将来は髪の毛から、歯を作る!?

「一度失ったエナメル質は二度と元には戻らない」
これまでの常識では、一度損なわれた歯のエナメル質は自然治癒せず、人工物で補うしかありませんでした。

しかし、最新の研究によって、髪の毛に含まれるタンパク質「ケラチン」を利用することで、損傷したエナメル質を修復・再生できる可能性が出てきました。

これが実用化されれば、削らずに虫歯を治したり、知覚過敏を根本から改善したりできるかもしれません。

そこで今回は、ケラチンを用いた歯の再生治療の仕組みやメリット、活用法や実用化に向けた課題について解説します。

ケラチンからエナメル質を再生できる?!

ケラチンからエナメル質を再生できる?!

2025年8月、キングス・カレッジ・ロンドンの研究チームは、髪の毛や皮膚、羊毛などに含まれるタンパク質であるケラチンが、歯のエナメル質を修復し、虫歯の初期段階を防ぐことを発見(※)しました。

ケラチンは髪の毛の成分なので簡単に手に入るというメリットがあります。使い方も簡単で、ケラチン入りの歯磨き粉やフィルムを損傷した歯に塗って、エナメル質を修復させるというやり方です。

これまでエナメル質の損傷に対しては、フッ素を使って進行を遅らせる、あるいは、虫歯部分を削って詰めものや被せものをするといったアプローチしかありませんでした。

これらはいずれも「壊れた部分を補う(補綴:ほてつ)」対処療法であり、エナメル質そのものを「再生する」ことはできません。

しかし、冒頭でもお伝えした、ケラチンを用いた技術が実用化されれば、傷ついたエナメル質を修復し、初期虫歯を「削らずに治す」ことができるようになるかもしれません。

(※)参照:Toothpaste made from hair provides natural root to repair teeth

そもそもケラチンとは?

そもそもケラチンとは?

そもそも今回のテーマであるケラチンとは、髪の毛、爪、皮膚の角質層に含まれる天然のタンパク質です。シャンプーやトリートメントのCMで名前を聞いたことがある方も多いかもしれませんね。

髪の毛の約90%はケラチンで構成されており、爪が硬いのも、皮膚の表面がバリアの役割を果たしているのも、すべてケラチンの働きによるものです。

今回の研究で、ケラチンは歯を保護するミネラル層を形成したり、知覚過敏の原因となる露出した神経管を封鎖し、修復する作用があることがわかりました。

フッ素もエナメル質の再石灰化を促し、歯を強くすることが知られていますが、エナメル質の構造を再構築することはできません。

しかし、ケラチンはエナメル質そのものの構造を再現し、保護機能まで回復させる可能性を秘めているのです。

多くのメリットがあるケラチンの活用

多くのメリットがあるケラチンの活用

お伝えしたように、ケラチンは髪の毛から採取できます。ご自分の組織の一部ですから、肉体にとって安心・安全な素材ですし、手軽に、そしてコストもかからず用意できるというメリットがあります。

また、生体材料なので、歯科治療でよく使用されるプラスチック等の化学物質を一切含まず、環境にも優しく、持続可能性にも優れています。

ケラチンを使った実験の手順

ケラチンを使った実験の手順

実際に行われた実験は、以下のような手順で行われました。

  1. ケラチンを髪の毛や羊の毛から抽出する
  2. ミネラルを含む唾液とケラチンを混ぜる
  3. 唾液中のカルシウムやリン酸等のミネラルとケラチンが結合する
  4. ケラチンが構造変化し、高度に組織化したエナメル質に似た結晶構造が作られる
  5. 時間の経過とともに、この結晶構造を足場として、カルシウムイオンとリン酸イオンを引き続き吸着し、ミネラルが結晶化する
  6. エナメル質の主成分であるハイドロキシアパタイトが形成され、エナメル質に似た構造が歯に作られる
  7. 歯磨き粉やジェルによってこれらを塗布することで、歯の表面にエナメル質のような被膜を形成する

これらの工程を経て、ケラチンからエナメル質を再生できることが判明しました。ただし、実験ではエナメル質様の物質を確認できましたが、まだ臨床的に使える段階ではありません。研究チームは現在も臨床応用に向け、研究を進めています。

こんな悩みが解決するかもしれない?ケラチンの歯科治療への応用

ケラチンの性質から様々な歯科治療への応用が期待されています。実際にどのような分野に応用できるかをご紹介しましょう。

虫歯治療

ケラチンの歯科治療への応用:虫歯治療

虫歯の初期段階では、エナメル質の表面が酸によって溶け始めている状態です。お伝えしたように、現在はフッ素塗布で経過観察するか、ある程度進行していれば、歯を削って詰めものや被せものをするのが一般的です。

しかし、ケラチンを用いたフィルムや歯磨き粉によって損傷したエナメル質を修復できれば、「歯を削らずに初期虫歯を治す」という、これまでにない治療が実現するかもしれません。

ただし、象牙質の奥深くまで進行してしまった虫歯には対応が難しいため、あくまで初期段階での活用が中心になります。

酸蝕症(さんしょくしょう)の治療

ケラチンの歯科治療への応用:酸蝕症

コラムでもご紹介した酸蝕症とは、酸性の飲食物や胃液によってエナメル質が溶けてしまう症状を指します。

エナメル質が薄くなると、歯そのものが弱くなることで虫歯のリスクも上がってしまいます。

もしエナメル質を再生できる技術があれば、薄くなったエナメル質を補い、歯の強度を取り戻せる可能性が出てきます。

知覚過敏の治療

エナメル質が薄くなると、内側にある象牙質や歯髄(しずい:歯の神経)に刺激が伝わりやすくなるので、知覚過敏も生じやすくなります。

ケラチンの歯科治療への応用:知覚過敏の治療

正常な歯は硬いエナメル質によって守られていますが、エナメル質が薄くなり、象牙質の部分が露出するようになると、象牙細管(ぞうげさいかん:歯髄から象牙質に向かって放射線状に伸びている無数の細い管)を通じて、さまざまな刺激が神経に到達しやすくなり、知覚過敏が起きてしまうのです。

ケラチンによる研究では、露出した象牙細管を塞ぐ効果も確認されており、エナメル質の厚みを増すことに加え、知覚過敏を防ぐこともできるようになると考えられています。

審美治療

審美治療

ケラチンから再生されたエナメル質は、天然の歯に近い色調や透明感を持つことが期待されています。

コンポジットレジンやセラミック詰めものでは、どうしても天然歯との微妙な色の差が出てしまうことがありましたが、ケラチンを活用する技術を用いれば、審美歯科でより自然で美しい仕上がりを実現できるかもしれません。

ケラチンは実際にどう使う?

実際の歯科治療で使用するとき、ケラチンはどのような形で使われるのでしょうか。現在検討されている方法は、主に2通りです。

歯磨き粉として取り入れる方法

ケラチンは実際にどう使う?:歯磨き粉として取り入れる方法

画像出典:Toothpaste made from hair provides natural root to repair teeth

毎朝・毎晩の歯みがきの際にケラチン配合の歯磨き粉を使うことで、日々のブラッシングが「予防」だけでなく「修復」の役割も果たすようになります。

現在の歯磨き粉を替えるだけで、特別な手間をかけずにエナメル質のケアができるのは嬉しいポイントですね。

歯科医院でマニキュアのように局所的に塗布する方法

ケラチンは実際にどう使う?:歯科医院でマニキュアのように局所的に塗布する方法

集中的にエナメル質を修復したい場合や、虫歯の初期段階が見つかった箇所に、ピンポイントでケラチンジェルを塗布して、効率的にエナメル質の再生を促す治療が想定されています。

どちらの方法も、歯を削ったり麻酔をする必要がなく、痛みも伴わないのがすぐれた特徴と言えるでしょう。

今後の課題は?

研究チームは2〜3年以内の実用化を目指していますが、お伝えしたように、実用化に向けてはいくつかの課題が残っています。

今後の課題は?

耐久性と安定性

まず、ケラチンによって再生されたエナメル質がどれだけ長持ちするかという耐久性の問題があります。

私たちは毎日食事をしますし、歯に力を入れて噛みしめることも多いでしょう。再生されたエナメル質が、こうした日常的な負荷に長期間耐えられるかどうかは、今後の臨床研究で検証していく必要があります。

また、口の中はpHが食事のたびに変化する過酷な環境です。ケラチンがエナメル質を再生するための条件を、実際の口腔環境の中で安定的に再現できるかどうかも、解決すべき技術的な課題です。

自分の髪の毛で歯を治す未来がやってくるかもしれません

自分の髪の毛で歯を治す未来がやってくるかもしれません

今回お話ししたように、髪の毛に含まれるケラチンを利用してエナメル質を再生させる技術は、それが現実のものになれば、安全性が高く、使用も簡単で低コストという多くのメリットがあります。

さらに、歯科材料としてよく使われるプラスチック類も一切使用しないため、環境にもやさしいという点でも優れています。

ただ、耐久性や口腔内環境での安定性など、実用化に向けて解決すべき課題も残っているため、夢のような技術が当たり前になる未来に期待しつつも、現時点では定期的な歯のメインテナンスを欠かさないようにし、今ある歯を大切に守っていくことが重要だと言えるでしょう。

町田歯科は、各分野の歯学博士や専門医が在籍し、最新の知見を取り入れながら、患者さん一人ひとりに適した予防・治療方法をご提案しております。お口のことで気になることがあれば、お気軽に町田駅すぐそばの町田歯科・矯正歯科にご相談ください。

参考文献

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