「矯正治療は若い時にしかできない?」
「30代・40代になってから矯正を始めても、ちゃんと歯は動くの?」
「やっぱり若い頃より治療期間が長くなる?」
歯並びは気になるけれど、年齢を理由に歯列矯正をためらっていませんか?
確かに、大人の歯列矯正は、成長期の子どもや10代の矯正とは異なる点があります。骨の新陳代謝が落ち着くため、歯が動くスピードは比較的緩やかになる傾向があるのは事実です。
しかし、結論から言えば、歯と歯茎が健康であれば何歳からでも歯列矯正は可能です。今回は、大人の歯列矯正に年齢がどう影響するのか、歯が動く基本的な仕組みから、年齢が治療に与える影響や対処法まで解説します。
そもそもどうやって歯は動く?矯正治療の基礎知識

年齢による影響を理解するために、まずは矯正治療で歯が動く基本的な仕組みから見ていきましょう。これは、子供も大人も同じ原理です。
歯は顎の骨に直接埋まっているのではありません。歯の根と骨との間に歯根膜(しこんまく)という組織があります。矯正装置で歯にじっくりと力を加えると、この歯根膜に刺激が伝わり、骨の中で次のような変化が起こります。

骨が溶ける
歯を動かしたい方向の歯根膜が縮み、破骨細胞(はこつさいぼう)という細胞が集まります。この破骨細胞が進行方向にある骨を少しずつ溶かしていきます。
新しい骨ができる
一方で、歯が動いたことで隙間ができた反対側では、歯根膜が引き伸ばされます。そこには骨芽細胞(こつがさいぼう)という細胞が現れ、新しい骨を作り出して隙間を埋めていきます。
この骨が溶けて、新しくできるというサイクルは骨のリモデリングと呼ばれています。矯正治療は骨のリモデリングの繰り返しで歯並びを整えていきます。この原理は、ワイヤー矯正でもマウスピース型矯正でも同様です。
大人の矯正は遅い?年齢が矯正治療に与える5つの影響
歯が動く仕組みが分かったところで、今回のテーマである矯正治療への年齢の影響について説明します。
「大人の矯正は時間がかかる」と言われることがあるのはなぜなのでしょうか。年齢が治療に与える影響について解説します。
歯が動くスピードが遅くなる

矯正治療で歯が動くのは、前述したように、骨のモデリングという働きのおかげです。
子供や10代の頃は、体全体の成長が活発で、骨の新陳代謝も非常に盛んです。そのため、骨のリモデリングがスピーディーに進み、歯も早く動きます。
ところが、大人は体の成長が止まり、骨の代謝も若い頃に比べると穏やかになっています。特に30代を過ぎたあたりから、新しい細胞を作り出す新陳代謝が低下し始めます。
すると、新しい骨を作り出すのが遅くなるため、歯が動くスピードが遅くなるのです。
矯正治療前に歯周病などのケアが必要になることがある

年齢を重ねることで、お口の中の状態が若い頃とは変わってくるため、治療の難易度に影響することがあります。
矯正治療は、健康な歯と歯茎があって初めてスタートできます。虫歯や歯周病は放置していると歯を失う原因になりますから、虫歯や歯周病の方は、それらの治療を終えるまで矯正治療は受けられません。
虫歯は若い方も大人の方もどちらにもみられますが、歯周病は年齢とともに増えていく傾向があります。
大人の方が矯正治療を受けようとした時、すでに歯周病になっているという可能性は若い方より大きく、矯正治療のスタートが遅れ、歯並びがきれいになるのが遅くなります。
歯が動かない骨性癒着のリスクがある

過去に歯を強くぶつけた経験などがあると、歯根膜の一部が失われ、歯根と骨が直接くっついてしまう骨性癒着(こつせいゆちゃく)を起こしていることがあります。
癒着した歯は歯根膜がないため、矯正力で動かすことができません。発生頻度は低いのですが、年齢を重ねた人の方がリスクは高まります。
ブリッジやインプラントへの配慮が必要

虫歯や歯周病、ケガなどで歯を失った後は、ブリッジという被せ物やインプラントなどで補う治療を行います。
ブリッジは、複数本の歯が連結されており、そのままでは動かせません。そのため、一度ブリッジを外し、仮歯に置き換えてから矯正治療を行うのが一般的です。
インプラントの場合は、骨と完全に結合しているため、動かすことは一切できません。そのため、インプラントの箇所をゴールとして、周りの歯を動かすような治療計画を立てる必要があります。
大人の方の場合、このように、ブリッジやインプラント等に配慮したうえで対処することもあるため、矯正治療の難易度は上がります。
長年の癖が後戻りを引き起こすことがある

矯正治療の後戻りって何?のコラムでも解説しましたが、後戻りとは、矯正治療を終えた後に、きれいになった歯並びが元の歯並びに戻ろうとする現象です。
後戻りが起こる理由はいくつかありますが、お子さんの歯並びに影響する癖とは?のコラムでお話しした、舌で前歯を押す、唇を噛むといった長年のお口の癖が原因の一つとして挙げられます。
歯並びは、舌が内側から押す力と、唇や頬が外側から押す力のバランスの上に成り立っています。子供の頃からの癖が体に染み付いている場合、改善に時間がかかる場合が多く、後戻りを引き起こす可能性が高くなります。
そのため、歯を動かす治療と並行して、舌のトレーニング(MFT:口腔筋機能療法)などを行い、根本的な原因を取り除くアプローチが重要になります。
年齢による影響にどう向き合う?歯科医院での対処法
ここまでの説明で、「やはり大人の矯正は大変そう」と不安に思われたかもしれません。しかし、これらの影響に対して適切な対処をしていくことで、きちんと矯正治療を行えるようになります。
矯正治療期間への対処

大人の矯正は、お子さんの治療に比べて期間が長くなる傾向がありますが、治療期間が何倍にもなるわけではありません。多少長引くといった程度です。
この点を考慮し、無理のない現実的な治療計画を提案します。余裕をもって治療を進めることで、年齢による影響に十分対応できるでしょう。
矯正治療の難易度への対処

骨性癒着や過去の歯科治療といった、大人の方ならではのお口の状態にも、一つひとつ丁寧に対応していくのが大切です。
骨性癒着の歯がある場合は、癒着している歯を無理に動かすことはしません。その歯が歯並び全体に大きく影響しない場合はそのままにし、他の歯を動かして全体のバランスを整えます。もし、治療の妨げになる場合は、その歯の抜歯を検討することもあります。
また、インプラントは動かしたり、撤去したりするのは難しいので、インプラントの位置に可能な限り合わせるように治療計画を立てることが多くなります。
矯正治療の後戻りへの対処

後戻りについては、リテーナーという後戻り防止用の装置を使います。特に、長年の癖が原因で後戻りの可能性が考えられる方には、一般的な期間よりも長くリテーナーを使用していただくなど、状態に合わせたフォローアップを行います。
この保定期間をきちんと経て、手に入れた美しい歯並びを長く維持することが可能です。
まずは町田歯科の無料矯正相談で不安を解消しませんか?

大人の方は、若い方と比べると骨の新陳代謝が穏やかになることで、歯が動くスピードは遅くなる傾向があり、過去に受けた治療や長年の癖が、歯列矯正の計画に影響することもあります。
しかし、それは大人の方が矯正治療を受けられないという意味ではありません。町田歯科では、一人ひとりの口の状態に合わせて余裕を持った治療計画を立て、骨性癒着などの課題にも丁寧に対処します。
今からでも遅くない!大人の矯正治療のコラムでもお伝えしたとおり、大人の方も矯正治療を受けると、外見が良くなるうえ、虫歯や歯周病の予防などの歯の健康増進や、口臭予防などのメリットも得られます。
町田歯科には日本矯正歯科学会の認定医が在籍し、大人の方の矯正治療も数多く手掛けております(実際の矯正例や費用については、町田歯科の矯正情報特設サイトをご参照ください)。
年齢を理由にためらっている方、歯列矯正についてご相談のある方は、町田駅すぐそばの町田歯科にぜひお越しください。








