前回は歯ぎしりや食いしばりの原因と影響についてご説明しました。虫歯などとは異なり、歯ぎしりや食いしばりは日常の癖や習慣による部分が大きく、すぐに大きな痛みを伴うケースばかりではないため、放置しがちにもなりますが、ずっとそのままにしておけば、歯が傷み、深刻な影響が出てくることもあります。
歯ぎしりや食いしばりが起こるのは、大半が睡眠中のため、ご家族の方が気づいて心配され、ご相談にいらっしゃるということも多いのです。実に日本人の70%の人が歯ぎしりを経験していているとも言われます。
歯ぎしりによってせっかく治療した詰めものが欠けたり、すり減ったり、さらに強い力が加わると、歯が割れたりすることもあります。また、健康な歯であっても、歯ぎしりによって歯がしみるようになったり、歯が揺れ始め、歯を失う原因になることまであります。
そこで今回は、歯ぎしりや食いしばりの種類や治療法について、より詳しく解説したいと思います。
前回も触れたとおり、歯ぎしりや食いしばりは原始的なストレス解消法の一つで、噛む力を入れることにより、表面に表せない感情やストレスをコントロールしていると言われますが、より専門的にはどのような状態を指すのでしょうか。まずはそこからご説明しましょう。
歯ぎしりや食いしばりの種類
歯ぎしりや食いしばりと一括りに言っても、専門的には以下のような分類があります。
クレンチング(食いしばり)
上下の歯を強く噛みしめている状態を指します。スポーツ選手や、仕事中に日常的に歯を食いしばっている方に多く見られます。音が出ないので、自覚している方は少ないでしょう。
クレンチングをしている方は、頬が固く、エラが張ったような顔だちになっています。噛む力は体重の約3倍もの力を発揮できると言われます。食事や会話で上下の歯が接しているのは1日5~20分ですが、それ以上に歯が接していることによって、あごや歯に負担がかかってしまいます。
起きた時にあごが痛い方、あくびをするとあごがガクガクして痛い方は、睡眠中のクレンチングが原因かもしれません。
また、クレンチングは睡眠時だけでなく、日中何かに集中している時に行っている方も多くいらっしゃいますから、ぜひ一度、日常生活で意識してみると良いでしょう。
グライディング(歯の擦り合わせ)
一般的に歯ぎしりというと、グライディングを思い浮かべることが多いと思います。上下の歯を大きくこすり合わせるので、睡眠中の「ギリギリ」「ガリガリ」という音をご家族が心配されて気づくことがあります。
上下の歯を強く噛んだまま、左右にこすり合わせるので、最も歯にダメージを与える歯ぎしりです。歯が削れやすく、歯がすり減って平らになっています。睡眠中に起きるのが一般的ですが、起きている間に行ってしまっている患者さんもいらっしゃいます。
タッピング
上下の歯を細かくカチカチと噛み合わせる行為です。クレンチングやグライディングのように大きな力はかかりませんが、下あごを細かく動かすため、あごや歯にかかる負担が大きくなってしまいます。
複数の症状を持つ患者さんも
歯ぎしりや食いしばりは、おおよそ上記のタイプに分けることができます。1つのタイプだけの方もいれば、複数持ち合わせている患者さんもいます。歯ぎしりや食いしばりは、歯やあごに負担かかかり、悪影響を及ぼしますので、放置せずに歯科医院に相談してください。
歯ぎしりや食いしばりの治療方法
ここからは実際の治療法について解説していきましょう。先に触れたとおり、歯ぎしりや食いしばりはストレス解消の一環でもあるため、無理にやめさせると、体に別の悪影響が出ることもあります。ご家庭でできることから、歯科医院で歯やあごを守る専門的な処置まで、適切な対応をするのが大切です。
マウスピース
歯ぎしりの治療というと、歯科医院で作製するマウスピースによる治療が一般的です。歯を守るだけのものや、あごの動きをコントロールするものなど、マウスピースにも様々な種類があります。
町田歯科でも患者さんひとりひとりに合ったマウスピースを作製しますので、歯ぎしりや食いしばりが気になるという方は、お気軽にご相談ください。
あごの筋肉マッサージ
必要以上に噛む行為は、あごの周りの筋肉に負担がかかります。体重の約3倍もの力がかかるということは、筋肉が大きな力を発揮しなければなりません。
耳の前からエラの辺りにかけての部分、そしてこめかみの周囲などにあごを動かす筋肉がついていますので、お風呂の中など、リラックスした状態で指の腹を使い、揉みほぐすと良いでしょう。
ボトックス注射
無毒化したボツリヌス菌を、過度に緊張して固くなった筋肉に注射することで、筋肉の働きを弱めて過緊張を取り除く治療です。
肩こりやしわ伸ばしで使われる治療を、あごの筋肉に応用したものです。1回の注射で、半年から1年程度効果が持続すると言われています。発達しすぎた筋肉を小さくするため、エラが目立たなくなり、小顔効果も期待できます。
噛み合わせ治療
歯の特定の部分が強く当たりすぎている場合、噛み合わせを調整することで、歯ぎしりが改善することがあります。
定期的に歯の状態をチェックする習慣を
歯ぎしりや食いしばりは、自分で気づくことが少ないものですが、あごが何となく疲れたり、歯がすり減ってしまうという悪影響があります。歯ぎしりや食いしばりと上手く付き合って行くためにも、定期的に歯科医院で検診を受け、歯の状態をチェックするように心掛けていただければと思います。