前回、前々回と、インプラント手術の際の注意点や、インプラント手術後の嚙み合わせについてお話ししてきました。今回はインプラント治療の具体的な流れや、必要となる治療期間についてお伝えしたいと思います。
そもそもインプラント治療は、虫歯治療や歯周病治療とも、詰めものや被せものを補う治療とも異なる外科治療です。このため、治療の流れも一般的な歯科診療と全く異なり、治療期間も長期に及びます。
実際にどんな手順でインプラント治療は進められるのか、どのくらいの治療期間を見ておくのが良いのかということを把握していただけると、より具体的に、そして計画的にインプラント治療を進めることができます。
インプラント治療の全体的な流れ
全体的なフローを理解していただくために、最初にインプラント治療の流れにおけるポイントを挙げておきましょう。インプラントの術式には、1回法と2回法があるのですが、おおよその流れは下記のようになります。
- 問診
- 各種検査
- 診断
- 治療方針の説明と同意
- インプラント埋入手術
- 待機期間
- 被せものの装着(2回法では、被せものの装着前に、アバットメント装着手術を行います)
- 経過観察
この流れに基づき、インプラント治療を進めていきます。以降で各々について解説しましょう。
問診
インプラント治療を行う際、始めに行われるのが問診です。
お口や歯のことで気になること、今までかかったことのある病気の有無や、現在治療中の病気があるかどうか、何か飲んでいる薬があるかどうか、アレルギーはあるかなどをお尋ねします。
問診の結果、インプラント治療に際して必要があれば、担当医師に問い合わせることもあります。
各種検査
インプラント治療前の検査としては、全身状態を調べる検査と、お口や歯の状態を調べる検査に分けられます。
全身状態を調べる検査は、血液検査や心電図検査などになります。お口や歯の状態の検査は、虫歯や歯周病の有無、歯並びや噛み合わせ、歯の本数や歯の形などを調べ、レントゲン写真やCTも撮影したうえで、顎の骨格の状態もしっかり確認します。
診断
各種検査の結果から、歯やお口の状態を診断します。ここで問題がなければ、実際にインプラント治療を計画していくことになります。
治療方針の説明と同意
診断結果に基づいて、インプラントの本数、長さ、向き、位置、骨増成(骨造成)をするかどうか、必要な場合の増成方法など、インプラント治療の治療方針を決めます。
治療期間や治療費もこの時に決まります。治療方針を説明し、その方針に同意をいただいてから、インプラント治療に着手します。
骨増生(骨造成)とは?
上述の骨増生(骨造成)術とは、インプラント治療に必要な骨の量が足りない場合に、骨を増やすために行う手術を指します。インプラントを埋入するには、土台となる骨の厚みや高さが必要ですが、外傷や歯周病などが原因で、骨が痩せてしまった場合などは、インプラントを支えることができません。このような状況で人工的に骨を補うのが骨増生(骨造成)術で、ソケットリフトやサイナスリフト、GBR(Guided Bone Regeneration:骨再生誘導法)などがあります。
町田歯科ではソケットリフトの症例が多数ありますので、骨増生(骨造成)について気になる方は、お気軽にお問い合わせください。
インプラント埋入手術
ここからは実際の処置になります。インプラントの埋入手術とは、インプラントを顎の骨に埋め込む手術を指します。
まず局所麻酔の注射をしてから歯肉を切開し、インプラントを埋め込む部分の骨を露出させます。そして、専用の機械を使ってインプラントのサイズに合った穴を開け、フィクスチャーというインプラントの土台に当たるものを埋め込みます。
1回法と2回法の違い
冒頭で触れた1回法と2回法では、インプラント埋入手術時の対応が異なります。ご説明しましょう。
1回法では、上部構造(被せものの人工歯)をセットする接続金具であるアバットメントを装着します。アバットメントは後述する待機期間の間、歯肉から露出した状態になっています。
2回法では、アバットメントはつけずにフィクスチャーに仮の蓋をするだけにとどめ、歯肉を縫合し、完全に塞いで終わります。
待機期間
インプラントのフィクスチャーはチタンで作られており、チタンと骨が結合する現象を利用してインプラントを安定させています。
チタンと骨が結合するのに3〜6ヶ月ほどの日がかかりますので、結合するまで待ちます。待機期間とは、骨と結合するまでの養生期間とも言えるでしょう。
被せものの装着
1回法
1回法の場合、上のインプラント埋入手術の図でご説明したとおり、すでにアバットメントは装着されていますので、以降の流れは比較的シンプルです。
待機期間中に問題がなければ、歯型を取って上部構造を製作し、完成した上部構造をアバットメントに装着すれば終了となります。
2回法の場合はアバットメント取付手術が必要
こちらもインプラント埋入手術の図をご参照ください。2回法の場合、インプラント埋入手術時は、フィクスチャーの装着をして、いったん縫合しています。そのため、アバットメントを装着しなければならず、2回目の手術が欠かせません。
フィクスチャーが歯肉に完全に覆われていますので、まず局所麻酔をしてからインプラント直上の歯肉を切開し、インプラントを露出させます。そしてフィクスチャーの仮の蓋を外し、ヒーリングアバットメントという仮のアバットメントを装着します。
その後、周囲の粘膜が落ち着くまで2週間前後待ちます。粘膜が落ち着いたところで、ヒーリングアバットメントを外し、上部構造をつけるためのアバットメントに取り替えます。
アバットメントの交換後、歯型を取って上部構造を製作し、完成した上部構造をアバットメントに装着すれば、2回法でのインプラント治療は完了となります。
経過観察
インプラントの上部構造を装着した後、しばらく生活していただき、噛み合わせや歯磨きの状態などを確認します。術後の経過をしっかりと確認し、歯のケアは怠らないようにするのが大切です。
インプラント治療にかかる期間
ここまでインプラント治療の流れをご説明しましたが、ここからは、インプラント治療はトータルでどのくらいの期間になるのかについてお伝えしましょう。
上述のとおり、1回法と2回法ではプロセスが異なるので、各々分けてお話しします。
1回法の治療期間
1回法では、2回目の手術がないので、手術とその後の養生期間が必要ありません。
インプラントのフィクスチャーを埋入してから、3~6ヶ月の待機期間を終え、すぐに上部構造の製作に進めますので、治療期間は4~7ヶ月ほどになります。
2回法の治療期間
お伝えしたように、2回法ではアバットメント取付手術が必要です。
インプラントのフィクスチャーを埋入してから、3~6ヶ月の待機期間、2回目の手術とその養生期間、上部構造の製作時間が必要なので、トータルの治療期間は5~8ヶ月くらいになります。
2回法の方が治療期間は長いのですが、1回法の方が良いとは必ずしも言えません。1回法は、全身疾患がある方には行うことができず、細菌感染のリスクも2回法より高くなります。また、1回法でインプラント治療を行うには、骨の量も必要です。
2回法の場合、通院回数や治療にかかる時間は多くなりますが、こういった制限はありません。大切なのは、患者さんの状態をしっかりと把握したうえで、最適なインプラント治療を行うことです。
手順と期間を理解して、スムーズなインプラント治療を
今回は、インプラント治療の流れと必要な治療期間についてお話ししました。現行のインプラント治療は、1回法と2回法に分けられますが、2回目の手術が必要かどうかを除けば、治療の流れはおおむね同じです。
治療期間は、2回目の手術の有無により、2回法の方が1ヶ月ほど長くなりますが、どちらもおおよそ半年前後です。インプラント治療をお考えの方は、スケジュールの目安になさってください。
また、インプラントは治療が終われば、何もしなくて良いわけではありません。前回のコラムでも解説したように、インプラントは噛み合わせの調整が重要です。そして他の歯への負担が少ないインプラントのコラムでもお伝えしましたが、清潔な状態を保つようにしないと、インプラント周囲炎を起こす可能性もあります。
インプラントも自然の歯と同様に、適切なケアが大切です。町田歯科では、治療だけでなく、その後のお口のケアもしっかりと行いますので、インプラントについて知りたいことやご質問のある方は、お気軽に町田歯科へお問い合わせください。