「食事中に奥歯でぐっと噛んだ瞬間、ピリッとした痛みが走る。でも、すぐに痛みは消えるし、何もしなければ特に気にならない…。」
そんな経験はありませんか?
心配になって歯科医院でレントゲンを撮っても「特に虫歯はないですね」「異常は見当たりません」と言われ、原因がわからないままモヤモヤしている方もいらっしゃるかもしれません。
もし、このような原因不明の歯の痛みに悩んでいるなら、その症状はクラックトゥース症候群かもしれません。今回は、そんなレントゲンにも映らないクラックトゥース症候群について解説します。
クラックトゥース症候群について

クラックトゥース症候群とは、歯の表面にあるエナメル質や、その内側にある象牙質に、目には見えないほど微細なひび(マイクロクラック)が入ることで、痛みやしみるといった症状を引き起こす状態を指します。
英語で「ひび」を意味する「Crack」と、「歯」を意味する「Tooth」を合わせて、クラックトゥース症候群(Cracked Tooth Syndrome:CTS )と呼ばれています。
クラックトゥース症候群のひびは髪の毛よりも細く、肉眼で確認することはほぼ不可能です。レントゲン写真にも写らないので、見つけ出すのは大変難しく、診断を困難にしています。
クラックトゥース症候群の原因は?
歯の表面(エナメル質)と内部(象牙質)の境目には、もともと目には見えないミクロの亀裂があります。これらの亀裂は、噛み合わせた時に生じる歯のひずみを逃すために存在しているのではないかといわれています。
しかし、歯に強い力がかかり続けると、この小さな亀裂が外に向けて伸びていき、エナメル質の表面まで届いて、歯にひびが入ってしまうと考えられています。特に、以下のような習慣や口内環境の方は注意が必要です。
歯ぎしりや食いしばりのある方

歯ぎしりや食いしばりなどの噛み合わせの癖がある方は、歯に強い力が加わった状態が続きます。
こうなると歯もすり減っていき、エナメル質が薄くなると、ひびも入りやすくなるため、クラックトゥース症候群を起こす可能性が高くなります。
歯の神経を取ったことがある方

歯は、神経と共に走っている血管から栄養や酸素を受け取ります。
根管治療により、歯の神経を取った歯は、神経と一緒に血管も失うため、歯に栄養が行き届かなくなります(失活歯)。その結果、歯はどうしても脆くなり、健康な歯に比べて割れやすく、ひびが入りやすくなってしまうのです。
硬いものを噛むことが好きな方

氷を噛む癖がある、ナッツ類や硬いおせんべいが好きなど、硬い食べ物を頻繁に口にする習慣も、歯に大きな負担をかけます。ガリっと硬い物を噛んだ瞬間の衝撃が、ひび割れを引き起こす引き金になることがあります。
金属製の詰め物が入っている方

特に奥歯に大きな金属の詰め物が入っている場合、歯と金属では硬さが違うため、噛んだ時に境目に応力が集中し、そこからひびが入りやすくなります。
クラックトゥース症候群の症状
冒頭でも触れましたが、クラックトゥース症候群の症状は、虫歯のように「常にズキズキ痛む」というわけではないので、どうしても見過ごされがちです。以下のような症状に心当たりがないか、チェックしてみてください。
冷たいものや甘いものがしみる

ひびの部分から刺激が神経に伝わりやすくなるため、冷たいものや甘いものを口にした時に、歯がキーンとしみるような痛みを感じることがあります。
噛んだ瞬間に鋭い痛みが生じる

食べ物を噛んだ時に、ひびを広げる方向に力が加わると、電気が走るような鋭い痛みが一瞬だけ現れます。口を開けている時や何もしていない時は痛まないのが特徴です。
ただし、クラックトゥース症候群の痛み方は様々です。同じ人でも痛みが出る時もあれば、出ない時もあります。
痛み方が一定でなく、歯科医院を受診してもその時に痛みが出ないこともあり、これがクラックトゥース症候群の診断を難しくしています。
どうやって見つける?クラックトゥース症候群の検査法
ではどうやってこの厄介なクラックトゥース症候群を見つけるのでしょう?クラックトゥース症候群を発見するには以下のような検査が必要です。
光透過診(こうとうかしん)を行う

強い光を歯に当てて、内部を透かして観察する方法です。ひびが入っていると、その部分で光の通り道が変わり、クラックトゥース症候群による歯の亀裂の線が、影として浮かび上がって見えます。
参考資料:う蝕検査における透照診の可能性(株式会社 モリタ)
染め出しする

クラック染色液という特殊な液体を歯の表面に塗ると、ひびの隙間にだけインクが染み込みます。余分な染色液を洗い流すと、ひびの線がくっきりと浮かび上がるため、クラックトゥース症候群が起きている位置や範囲を確認できます。
この染色液は検査後にきれいに洗い流せるので、歯に色が残る心配はありません。
マイクロスコープを使う

マイクロスコープとは、精密根管治療などに用いる、歯科用の高性能な顕微鏡のことです。町田歯科では、マイクロスコープを根管治療の際に使用しています。
マイクロスコープは、肉眼では見ることのできないひびを直接観察できるため、クラックトゥース症候群の診断において強力なツールとなります。
クラックトゥース症候群の治療法
残念ながら、一度入ってしまった歯のひびを元の何もない状態に治すことはできません。そのため、治療の目的は「これ以上ひびが広がらないように歯を保護し、歯の寿命を延ばす」ことになります。
神経を残して被せ物をする

治療の基本は、歯全体を覆う被せものを装着することです。ひびが浅く、クラックトゥース症候群の症状が比較的軽い場合は、歯の神経を残したまま歯の形を整え、クラウンを装着します。
被せ物で歯を守りつつ、歯の神経を残すのがメリットですが、ひびが大きくなった場合、歯に強い痛みが出る可能性があります。
歯の神経を取って被せ物をする

ひびが深く、痛みが強い場合や、すでに神経に炎症が起きている場合は、まず歯の神経を取る治療(根管治療)を行ってから被せものを装着します。
このように治療すると、ひびが少々広がっても痛みが出ることはありません。ただし、痛みを感じなくなるため、歯に大きなダメージが加わっても気づかず、気づいた時には歯が割れていたということもあるため、注意が必要です。
クラックトゥース症候群を放置するリスク
クラックトゥース症候群は歯の寿命に大きく影響しますが、虫歯や知覚過敏と間違えられることもあり、見つけるのはかなり難しいと言えるでしょう。しかし、クラックトゥース症候群に気づかず放置してしまうと、取り返しのつかない事態を招く可能性もあります。
歯髄炎や歯根破折

もし、ひびが歯の内部にある神経にまで達すると、そこから細菌が侵入します。すると、神経が感染して炎症を起こし、歯髄炎(しずいえん)になります。こうなると、何もしなくてもズキズキと激しく痛むようになり、歯の神経を取る根管治療が必要です。
ひびがさらに進行し、歯の根っこ(歯根)にまで達してしまうと、歯根破折(しこんはせつ)といって、歯が割れてしまう可能性もあります。
歯根まで完全に割れてしまった歯は、現代の歯科医療技術をもってしても元に戻すことはできません。残念ながら抜歯という最終手段を選択せざるを得なくなります。
「原因不明の痛み」を放置した結果、大切な歯を失ってしまうこともある…それがクラックトゥース症候群の最も怖い点なのです。
原因不明の歯の痛みは諦めずに町田歯科へ相談を

今回お伝えしたように、クラックトゥース症候群は、歯のエナメル質に目に見えないほどの小さな亀裂が生じる病気です。
クラックトゥース症候群の症状はさほど強くないことも多く、症状が起きている箇所を見つけることも難しいことから、知覚過敏などの別の病気と思われてしまうこともあり、確かな技術と経験を持った歯科医院での診断が求められます。
実は、クラックトゥース症候群は歯科医師の間でもあまり知られていない病気です。町田歯科では、こうした診断が難しい症状の究明にも、各分野の専門医が力を注いでいます。その痛みを「気のせい」だと諦めてしまう前に、ぜひ一度、町田駅すぐそばの町田歯科にご相談ください。








