歯医者さんの診療室に入ると、色んな音が聞こえてきます。歯を削る時のキーンと響く高い音や、掃除機のように吸い込む低い音など、様々な音が響いていますよね。
その中で「ピピピ」と鳴る電子音に気づいた方もいらっしゃるでしょう。実はこの音は主に根管治療(歯の根っこの治療)の際に出るものです。
今回は、歯科医院で聞こえる「ピピピ」音の正体についてご紹介します。
根管治療中のピピピ音は…
電気的根管長測定器(EMR)
歯の治療中にピピピと鳴る電子音。この音の正体は、電気的根管長測定器という歯根の長さを測るための装置によるものです。電気的根管長測定器は、EMR(Electric Measuring of Root canal length)とも呼ばれています。
根管の内部は暗くて複雑な形態をしており、直接目で見て確認することができないため、この装置を使って根管の長さを把握しているのです。
電気的根管長測定器(EMR)の仕組み
電気的根管長測定器(EMR)は、電気抵抗の差を測定することで根管の正確な長さを割り出す装置です。
電気的根管長測定器(EMR)の使い方としては、まず最初に、患者さんの口角に針金のようなパーツを着けます。次にファイルやリーマーと呼ばれる器具に電極を取り付け、根管内に挿入します。
この口角に着けたパーツと、根管内に挿入した器具との間に生じる電気抵抗の差を測定することで、歯根の長さを測ることができます。これが電気的根管長測定器(EMR)の原理です。
なお、電気的根管長測定器(EMR)には、「電気的」という文字が入っていますが、感電の危険はないので安心してください。
ピピピ音は歯根の長さを知らせている音
電気的根管長測定器(EMR)には、モニター画面が装備されており、歯根の先端に電極が近づいている状況を目で見てわかりやすく案内してくれます。
しかし、お口の中を見ながらモニター画面を見ることはできませんし、モニター画面を見ているとお口の中を確認することはできません。
そんな時、頼りになるのが「耳」です。
初めはピーピーピーという長い音が、歯根の先端に電極が近づくにつれて、ピッピッピッ、ピピピというようにリズムが変化することで、歯の根の先がどれくらいの位置にあるのかを知らせてくれます。これによって、歯根の長さを計測することができるのです。
ピピピという音に、最初は戸惑う方もいらっしゃるかもしれませんが、治療中に何らかの問題が発生したわけではないので安心してください。
電気的根管長測定器(EMR)のメリット
ファイルやリーマーを挿入してのレントゲン撮影が不要に
電気的根管長測定器(EMR)が登場したのは1969年、人類が初めて月に行った年です。ちなみに、電気的根管長測定器(EMR)は日本の発明です。
それまでは、歯根の長さを測るには、根管内にファイルやリーマーを挿入した状態でレントゲン写真を撮り、少しずつ挿入量を増やしながら撮影を繰り返すという方法しかありませんでした。そのため、歯根の先端に器具が届くまで、何度も撮影が必要だったのです。
電気的根管長測定器(EMR)を使用することで、このような方法を採らなくても歯根の長さを把握できるようになり、何枚もレントゲンを撮る必要はなくなりました。
歯根の長さを正確に把握できる
根管治療では、細菌や汚染物質を根管内から除去し、歯根の先端まで清掃することが重要です。そのためには、歯根の長さを正確に計測できる電気的根管長測定器(EMR)の存在は欠かせません。
レントゲンを用いる方法でも歯根の長さを計測できますが、細部まで正確に測ることは不可能です。これに対して、電気的根管長測定器(EMR)は0.1ミリ単位で測定ができるため、歯根の先端まで確実な清掃が可能になります。
根管の長さを正確に把握することは、根管治療の精度を高めることにも役立ちます。さらに町田歯科ではマイクロスコープを使用した精密根管治療も提供しておりますので、より高精度の根管治療をお考えの方は、お問い合わせください。
患者さんの負担を軽減できる
歯根の形はとても複雑です。歯科医師の指先の感覚で治療を進めると、まれに根の先を突き抜けてしまい、腫れや痛みを生じることがあります。
電気的根管長測定器(EMR)を使用すれば、ファイルやリーマーが歯根の先を突き抜けるリスクを減らし、効率的に治療を進めることができます。
根管充填が正確になる
根管内の細菌を除去した後は、根管充填と呼ばれる密閉処置を行います。根管充填の際は、根管内に細菌が侵入しないよう、歯根の先まで隙間なく薬剤を詰める必要がありますが、歯根の長さを正確に把握していなければ精密な処置はできません。
根管治療に使用される消毒剤や充填材を正しく選択し、精度の高い治療を実施するためにも、電気的根管長測定器(EMR)は非常に重要な装置です。
電気的根管長測定器(EMR)の難点は?
多くのメリットがあり、根管治療の際には多く使用される電気的根管長測定器(EMR)ですが、注意しなくてはいけないケースもあります。
電気的根管長測定器(EMR)を使うには、電気抵抗の差を利用する性質上、根管内を湿らせておかなくてはなりませんが、もし虫歯が大きいと、根管内から漏れ出した水分によって漏電が起き、正確な数値が測れなくなることがあります。
より精度の高い根管治療をお考えの際は町田歯科へ
電気的根管長測定器(EMR)は、根管治療に欠かせない装置です。歯根の長さを正確に測定することで治療の精度が向上し、結果的に長期的な歯の健康を保つことにもつながります。
これからは、歯科医院で「ピピピ」という音が聞こえたら、精密な根管治療を行っていると思ってみてください。
できる限り自分の歯を残したいのページでも解説していますが、町田歯科ではマイクロスコープ(歯科用顕微鏡)を用いた精密な根管治療を提供しております。また、ラバーダム防湿も患者さんの状況に応じて行い、より安全で精度の高い対応をすることが可能です。
従来の根管治療では難しかった症例に対しても対処できる可能性がありますので、腫れや痛みがある方はもちろん、何度も根管治療を繰り返している方、痛みに敏感な方も、町田駅すぐそばの町田歯科までお気軽にご相談ください。