ブラックトライアングルとは、歯と歯ぐきの間にできる黒い三角形の隙間のことをいいます。影になって黒く見えることから、その名がつきました。ダークトライアングルや歯間鼓形空隙(しかんこけいくうげき)とも呼ばれます。
歯茎が下がってしまうことにより、このブラックトライアングルができますが、矯正治療において前歯で見られることも多い症状です。上の歯にブラックトライアングルができてしまうと、笑った時に目立ち、口元の印象を悪くしてしまう原因にもなりかねません。せっかく歯並びがきれいになっても、ブラックトライアングルが目立ってしまったら残念ですよね。
そこで今回は、そんなブラックトライアングルの原因や治療法について説明していきます。
ブラックトライアングルの原因
冒頭でも触れたとおり、ブラックトライアングルができてしまう原因は、歯茎が下がってしまうことです。これには様々な理由があります。代表的な原因をいくつか紹介しましょう。
加齢によるもの
ブラックトライアングルの三角形の底辺を作っている部分にある、歯と歯の間の歯茎(歯間乳頭:しかんにゅうとう)の下には、歯槽骨(しそうこつ)と呼ばれる骨があります。
しかし、加齢とともに歯の周りの細胞の働きが衰えてくると、歯槽骨の位置は下がり、歯茎も痩せてしまう症状が出てきます。歯は歯茎に埋まっている方に向けて細くなっていますが、歯間乳頭が痩せてしまうと、そこに隙間が生まれ、ブラックトライアングルができてしまうのです。
特に40代を過ぎると、この現象が目立つようになり、気になる方も多いようです。
歯磨きの習慣によるもの
歯と歯茎の間はプラーク(歯垢)が溜まりやすく、丁寧に磨きたい場所です。しかし、歯と歯茎の間の汚れを取ろうと、強い力でブラッシングすると、かえって歯茎を傷つけてしまい、ブラックトライアングルができてしまう可能性があります。
歯を長持ちさせるセルフケアとプロフェッショナルケアのコラムでもお話ししましたが、正しい方法で歯磨きを行えば、力を入れなくても十分に汚れを取り除くことが可能です。
そして、定期的に歯科医院を訪れ、専用機器によるPMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)で歯のクリーニングを行うことも忘れないでください。その際は、歯磨き指導(TBI:Tooth Brushing Instruction)を受けることをおすすめします。
歯周病や咬合性外傷によるもの
歯周病になると、歯茎の腫れである歯肉炎から始まり、そこで適切な対処をせず、悪化してしまうと歯周炎になります。さらに重度の歯周炎になると、歯周ポケットはより大きくなって、歯槽骨が溶けてしまうこともあり、歯茎も下がってきてしまいます。これがブラックトライアングルの原因になります。
また、咬合性外傷(こうごうせいがいしょう)とは、噛み合わせの力(咬合力:こうごうりょく)が過剰に加わり、歯や歯茎、歯槽骨などの組織にダメージを与えてしまう症状をいいます。この咬合性外傷により、歯間乳頭が痩せてしまうと、そこにブラックトライアングルができることがあります。
矯正治療もブラックトライアングルの原因になる?
冒頭で、矯正治療に伴い、前歯にブラックトライアングルが現れることがあるとお話ししました。こう聞くと、「歯並びを良くするための矯正治療でブラックトライアングルができるの?」と驚かれた方もいるでしょう。
しかしご安心ください。矯正治療そのものがブラックトライアングルの原因というわけではありません。以下のようなケースでは、矯正治療によってお口の中の環境が変化し、歯茎が下がり、ブラックトライアングルができることがあるということなのです。
もとの歯茎が腫れていた
矯正治療で歯並びが整うと、以前よりも歯ブラシが届きやすくなります。その結果、今まで腫れていた歯茎の炎症がおさまり、健康的に引き締まることがあります。
非常に良いことですが、 矯正治療によって歯茎の腫れが引くと、歯と歯の間に隙間ができ、ブラックトライアングルが目立つようになる場合があります。 これは歯茎が下がったわけではなく、「腫れが引いて本来の姿に戻った結果、以前は隠れていた隙間が見えるようになった」ということです。
歯並びが悪く、歯を支える骨が少ない
歯並びが悪いと、歯が重なり合って生えている部分もあるでしょう。このような歯並びを叢生・乱杭歯(そうせい・らんくいば)と呼びます。
実は、重なり合う部分の歯を支える骨は、もともと少ないことが多いのです。矯正治療では、歯を正しい位置に動かすために、この骨の薄い部分にも歯を並べなければなりません。
しかし、骨の厚みは矯正治療で増えるわけではないため、歯と歯茎の間に隙間ができやすくなってしまうケースも出てきます。特に、歯並びが大きく悪かった方は、矯正治療後にブラックトライアングルが目立つようになる可能性が高くなります。
ブラックトライアングルの影響は?
ブラックトライアングルができると、歯がグラグラしたりしないだろうか…と心配になる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、基本的にブラックトライアングルができてしまっても歯の機能としては問題ありません。矯正中の場合は、治療を中断することはありませんし、治療期間や治療方針も変更しないことがほとんどです。
ただし、原因が歯周病によるものの場合、歯を支える骨が溶けて歯がグラグラしてくることがあります。これは歯周病治療が必要ですが、多くの場合、ブラックトライアングルで問題になるのは審美性です。歯茎に隙間が空いたり、歯が長く見えるため、コンプレックスに感じる方もいらっしゃるでしょう。
ブラックトライアングルの治療法
ではブラックトライアングルはどのように治療するのでしょうか?
残念ながら、ブラックトライアングルは自然に治ることはありません。しかし、以下の治療法で目立たないようにすることは可能です。
IPR・ディスキング
詳しくは、IPRとは?のコラムで解説しましたが、IPR(InterProximal Reduction)やディスキングとは、歯の側面をほんの少し削り、歯並びを整えるスペースを確保する処置のことです。
ブラックトライアングルが気になる場合は、このIPRやディスキングを行い、矯正治療によって歯の間隔を正常に整えることで、隙間が目立たないようになります。
ヒアルロン酸注入
歯茎にヒアルロン酸を注入し、ボリュームアップさせることで、隙間を目立たなくすることもできます。ただし、効果は一時的であるため、定期的な注入が必要です。
また、病気ではないので自費診療になることに加え、ブラックトライアングルに対してのヒアルロン酸注入を積極的に実施しているクリニックは、さほど多くありません。
CTG(結合組織移植術)
CTGはConnective Tissue Graftの略で、結合組織移植術といいます。町田歯科ではCTGを行っておりますが、分かりやすく説明すると、歯茎のボリュームが足りず、ブラックトライアングルができている箇所に、主に口蓋部分から歯肉内部の組織を移植する方法です。
組織が移植されることで歯茎にボリュームが出るため、歯間乳頭が正常な状態に見えるようになり、ブラックトライアングルが解消されます。
ブラックトライアングルのリスクを減らした矯正治療を
今回は歯茎の間にできる黒い三角形の隙間、ブラックトライアングルについて解説してきました。ブラックトライアングルができるリスクには個人差があり、患者さんごとの歯周病の程度、骨の量、歯列不正の程度など、様々な要因が影響します。
ただ、ブラックトライアングルになりやすいかどうかは、専門家が診るとある程度予想することが可能です。町田歯科では、最新の設備による各種検査やシミュレーションを行い、ブラックトライアングルができるリスクを予測し、その可能性が高い場合は、リスクを減らすための矯正治療をご提案いたします。
「矯正治療を考えているけど、ブラックトライアングルが心配…」という方は、当院の矯正無料相談をご利用ください。日本矯正歯科学会の認定医や、多くの知見を持つ歯科医師たちがお悩みや疑問に丁寧にお答えしますので、町田で矯正治療をお考えの際は、町田歯科・矯正歯科にお気軽にご相談いただければと思います。