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歯周病

歯茎から出血が・・・それってなぜ?

皆さんは、歯茎や頬の裏側など、お口の中が出血した経験はありませんか?

もともと歯は健康な方が「歯磨き中に、つい力が入り過ぎて歯茎から少し血が出てしまった」という話なら良いのですが、お口の中で出血が起こるのには様々な原因があり、軽んじない方が良いケースもあるのです。

口腔内の病気として、歯茎から出血する原因の多くは歯周病です。また、口内炎ができて出血することもあります。これら以外にも、その他の病気や服用している薬が原因で、出血しやすくなることがあります。

今回は、歯茎やお口の中が出血しやすい状態になる理由について、詳しくお伝えしましょう。

出血と止血

出血と止血

まず最初に、そもそも血が出るメカニズム(出血)と、出血した血が止まるメカニズム(止血)についてお話しします。

出血とは、皆さんもご存じのとおり、血管が傷ついて血液が体外に流れ出ることです。出血の量や速さによって、軽度から重度まで様々な状態になります。出血が多いと、貧血や失血性ショックなどの危険な状態に陥ることもあります。

出血が止まるのに必要な要素

出血を止めるには、血管・血小板・凝固因子という3つの要素が必要です。血管は、収縮して傷口を塞ぎます。血小板は傷口に集まってかたまりを作り、出血を防ぎます。凝固因子は、血小板のかたまりを強化します。この3つの要素が正常に働くと、出血は自然に止まります。

しかし、これらの要素が不足したり、異常をきたしていたりすると、出血が止まりづらくなるのです。

血が止まりにくい病気、体の変化

血が止まりにくい病気、体の変化

血小板減少症(けっしょうばんげんしょうしょう)

血小板減少症とは、字のとおり、血液中の血小板の数が少なくなる病気です。ちょっとした刺激で出血しやすく、(※)点状出血(てんじょうしゅっけつ)や皮下出血斑(ひかしけつはん)などがよく見られます。

出血を止めるために、血小板減少症では血小板輸血を行います。このように、足りない要素を補う方法を補充療法といいます。

(※)毛細血管が破れて生じる、赤色や紫色の点のような小さな出血。

血友病

血友病とは、凝固因子が不足する病気です。ちょっとした刺激で出血しやすく、歯磨きもしづらいと言われます。出血を止めるために、補充療法として、血友病では凝固因子製剤を用います。

加齢や妊娠

高齢者は、肝臓や腎臓の機能が低下していることも多く、出血した際に、適切な量の凝固因子を産生できないケースもあります。

妊娠中の女性も血が止まりにくい状態になることがあります。妊娠中は、母体と胎児のために血液量が増えるため、血液中の凝固因子や抗凝固因子(こうぎょうこいんし:凝固を抑制する因子)の濃度が変化します。

妊娠中は凝固因子が増えて抗凝固因子が減るため、出血よりも血栓(血のかたまり)が生じるリスクが高くなるとされますが、妊娠の時期によっては、逆に抗凝固因子が増えて凝固因子が減る時もあります。

血が止まりにくくなる薬

血が止まりにくくなる薬

持病等の理由で、以下で述べるような血が止まりにくくなる薬を処方されている方は、歯科治療の際、必ず事前に伝えるようにしましょう。

抗血小板薬

抗血小板薬とは、血液が固まりにくい状態にする薬です。血管内にできる血栓を予防する効果があります。血栓ができると、心臓や脳などの重要な臓器に血液が届かなくなり、心筋梗塞や脳梗塞などの命に関わる病気を引き起こす可能性が生じます。

抗血小板薬は、血小板の働きを抑制する作用があります。前述のとおり、血小板は、血管が傷ついた時に止血する役割を持つ細胞ですが、過剰に活性化されると、他の血小板と結合して血栓を作る原因にもなってしまうのです。

抗血小板薬には、次のようなものがあります。

アスピリン(商品名:バイアスピリン、バファリンなど)

血小板の働きを活性化する酵素を阻害し、血小板の凝集(ぎょうしゅう:集まってかたまりになること)を抑える薬です。

クロピドグレル(商品名:プラビックス)

血小板同士の結合を抑える薬です。

シロスタゾール(商品名:プレタール)

血小板凝集を抑制する作用がある薬です。

抗凝固薬

抗凝固薬とは、血液が固まる作用を阻害する薬です。こちらにも血栓を予防する効果があります。

ワルファリン(商品名:ワーファリン)

ビタミンKと拮抗(きっこう)することで、ビタミンK依存性の凝固因子の合成を阻害し、血液の凝固を防ぎます。

プラザキサ(商品名:ダビガトランエトキシラートメタンスルホン酸塩)

凝固因子を直接阻害します。

エリキュース(アピキサバン)

こちらもプラザキサ同様、凝固因子を直接阻害します。

歯茎からの出血に注意

歯茎からの出血に注意

冒頭でも触れましたが、歯茎からの出血は、一般的には歯周病の初期段階である歯肉炎や、さらに進行した歯周炎の症状です。

詳しくは歯周病治療のページでも解説していますが、歯肉炎は歯茎の表面に限定された炎症で、適切な治療・ケアで改善します。歯周炎は、歯茎周りの歯周ポケットや歯槽骨(しそうこつ)にまで及んだ炎症で、放置すると歯がグラグラしたり、自然脱落してしまうなど、重篤な合併症を引き起こす可能性があります。

歯周病を防ぐには、日頃から丁寧な歯磨きを心掛け、デンタルフロスやマウスウォッシュも併用し、歯を健康に保つことが第一です。ただ、これらのセルフケアだけでは不十分になりがちですから、歯科医院で行うPMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)などのプロフェッショナルケアを併用するようにしてください。

軽んじてはいけない歯茎からの出血

歯茎からの出血は、歯周病だけではなく、他の全身的な疾患のサインとなる場合もあります。

例えば、歯茎の出血に鼻血や皮下出血を伴う場合、今回お話しした血友病や血小板減少症、白血球減少の可能性があります。

また、歯茎の出血に加え、体調不良も感じている場合は、糖尿病の可能性もあります。これも歯周病治療のページでお伝えしていますが、特に歯周病と糖尿病の関係性は近年明らかになっていますから、注意してください。

その他にも、歯茎の出血に口内乾燥や口臭がある場合は、シェーグレン症候群(唾液腺と涙腺に炎症が起こる疾患)の可能性が考えられます。

このように、歯茎からの出血には他の疾患が関係していることもあるため、早めに歯科医院で相談して原因を特定し、適切な治療を受けるようにしましょう。

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