「矯正治療をしたのに、歯並びが少しずつ戻ってきた気がする…」
「舌の癖を指摘されたけど、歯に何か影響があるの?」
このような、あなたの「舌」に関する不安や疑問はありませんか?
私たちが普段意識することのない舌圧(ぜつあつ:舌の押す力)は、実は歯並びを左右するほどの力を持っています。無意識に行っている舌の癖が、持続的に歯に影響することで、きれいな歯並びを乱し、出っ歯やすきっ歯になることもあるのです。
さらに発音が不明瞭になったり、嚥下(食物を飲み込むこと)に悪影響が出ることもありますから、舌の働きを決して軽視してはいけません。
そこで今回は、舌圧の基礎知識から、舌の癖が歯列に与える影響、改善のためのトレーニングまで、詳しく解説します。
舌の大切な役割と舌圧

食事や会話に欠かせない「舌」には、私たちが思う以上に多くの役割があります。
- 食べ物を飲み込みやすい塊(食塊:しょっかい)にまとめる
- 歯並びを正しくし、顎の成長を促す
- 言葉をはっきりと発音する
- 味を感じる
舌は筋肉の塊であり、舌を形作る内舌筋(ないぜつきん)と、舌の外側に付いていて、舌の位置を変える外舌筋(がいぜつきん)からできています。
そして、冒頭でも触れましたが、舌圧とは舌が押す力、より正確に言うと、舌が上顎に接する際にかかる力を指します。

実は、人間に欠かせない食物を飲み込む動作(嚥下:えんげ)も、舌の筋肉がきちんと機能し、舌圧が正常だからこそ、食べ物をしっかりと上顎に押し付け、喉の奥へとスムーズに送ることができているのです。
つまり、私たちが普段意識することなく行っている「食べる」「飲む」、あるいは「話す」といった動作は、舌の筋肉が巧みに動くことで成り立っていると言えるでしょう。
だからこそ、舌を正しく動かせなければ、どんどん筋力が落ちてしまい、舌圧も低下し、様々な不具合が生じてくるようになります。
舌癖のセルフチェック

医療機関では舌圧計や舌圧測定器という機材で正確な数値を測定できますが、まずはご自宅で簡単にできるセルフチェックで、問題となる舌癖(ぜつへき:舌の位置や動きの癖)がないか試してみましょう。当てはまる項目が多いほど、舌圧が低下している可能性があります。
- 安静時に口を閉じた時、舌が下顎の前歯の裏側に触れている(※低位舌:ていいぜつ)
- 飲み込むときや話すときに舌を前に押し出している(舌突出癖:ぜつとっしゅつへき)
- サ行・タ行・ラ行が発音が不明瞭である
- 薬の錠剤やカプセルを飲み込むのが苦手
- 以前に比べて、食事に時間がかかるようになった
- 食べこぼしをすることがある
安静時の舌の位置にも注意

また、安静にしている時の舌にも注目しましょう。正しい舌の位置は、舌先が上前歯の少し後ろにあるふくらみ(スポット)に軽く触れ、舌全体が上顎にぴったりと収まっている状態です。
これにより、唇による外側からの力と、舌による内側からの力でバランスが保たれ、前歯は正しい上下の傾きを維持できます。そして、舌は奥歯の裏側の面にも接しています。こちらも同様に、頬による外側からの力、舌による内側からの力がバランスすることで、上下の歯並びが理想的なアーチを描くようになっています。
もし、無意識のうちに舌が下の前歯の裏側にあったり、だらんと下がっていたりする場合、それは(※)低位舌(ていいぜつ)という癖かもしれません。
この状態が続くと、歯並びが乱れたり、口呼吸になったりする原因となることがありますので、一度ご自身の舌の位置を意識してみてはいかがでしょうか。
(※)低位舌について、より詳しくは提携医院である札幌のポラリス歯科・矯正歯科の滑舌が悪い?それって低位舌が原因かものコラムをご参照ください。
舌圧が歯並び与える影響

前述のように、きれいな歯並びは内側から舌が支える力と、外側から唇や頬が押さえる力の絶妙なバランスによって保たれています。舌が正しい位置にあることで初めてバランスが整い、歯が本来あるべき場所にきれいに並びます。
しかし、舌癖によって舌が常に低い位置にあったり(低位舌)、前歯を押し続けたり(舌突出癖)すると、力のバランスが崩れてしまいます。その結果、次のような問題が起こりやすくなるでしょう。
出っ歯・すきっ歯(上顎前突・空隙歯列)

飲み込むときなどに、無意識に舌で上の前歯の裏側を押し出す癖があると、その力が継続的に前歯にかかり続けます。
この影響で、上の前歯が前方に傾いて出っ歯(上顎前突:じょうがくぜんとつ)になったり、歯と歯の間に隙間ができて、すきっ歯(空隙歯列:くうげきしれつ)になったりすることがあります。
受け口(反対咬合・下顎前突)

舌が本来あるべき上顎ではなく、常に低い位置に落ち込んでいる低位舌の状態では、舌が下の前歯ばかりを押すことになりがちです。これにより、下顎が前方へ突き出た受け口(反対咬合:はんたいこうごう、下顎前突:かがくぜんとつ)につながることがあります。
開咬

奥歯でしっかり噛んでも、上下の前歯の間に隙間ができて閉じない状態を開咬(かいこう)と呼びます。常に上下の歯の間に舌を挟み込んだり、舌を前に突き出したりする癖が原因で起こりやすい歯列不正です。
矯正の後戻り

詳しくは矯正治療の後戻りって何?のコラムで解説していますが、矯正治療によって歯並びを整えても、舌圧が大きすぎると、異常な力が加わって歯並びが元に戻ってしまうことがあります。
舌突出癖や指をしゃぶる習慣がある方は、知らないうちに歯に大きな力がかかっている可能性があるため、気をつけなくてはなりません。
また、こういった口腔習癖(こうくうしゅうへき:お口に関係する癖のこと)が小さなお子さんに見られる場合の注意点については、お子さんの歯並びに影響する癖とは?のコラムでも解説していますので、併せてご参照ください。
舌の力を鍛えるには?
舌圧やお口周りの筋肉のバランスが取れていないと、歯並びが悪くなってしまいます。ここでは、ご自宅で手軽に始められるトレーニングから、歯科医院で専門的に行う訓練まで、舌の力を鍛える方法をご紹介します。
自宅でできる簡単トレーニング「あいうべ体操」

まず試していただきたいのが、テレビなどでも紹介されることのある「あいうべ体操」です。これは、舌や唇、頬の筋肉を総合的に鍛えることができる簡単なトレーニングで、口呼吸の改善にもつながると言われています。
あいうべ体操のやり方
- 口を大きく開けて「あー」と言う
- 口を横に大きく広げて「いー」と言う
- 唇をできるだけ前に突き出して「うー」と言う
- 舌を顎の先につけるようなイメージで、下へ思い切り伸ばして「べー」と言う
この1.~4.の動きを1セットとし、1日に30セット(例:朝昼晩に10セットずつ)を目安に行いましょう。声は出さなくても大丈夫です。ポイントは、一つひとつの動きを大げさなくらい大きく、ゆっくり行うことです。
あいうべ体操の他にも、風船を膨らませたり、スポットに舌の先を置き音を鳴らして舌を離すようにするのも効果的です。
歯科医院で行う専門的な訓練「MFT(口腔筋機能療法)」

以前、コラムでもご紹介したMFT(口腔筋機能療法)とは、舌、唇、頬など、お口周りの筋肉の正しい使い方を習得するためのトレーニングプログラムのことです。例えば、以下のようなトレーニングを専門家の指導のもとで行います。
ポッピング
- 口を大きく開けて、舌の先を上顎の前歯の裏側よりも少し奥(スポットと呼ばれる)に付ける
- 舌の先をスポットに付けつつ、舌全体が口蓋に吸い付くように持ち上げる
- 2.の状態を数秒続けた後、ポンと音を立てて離す
MFTにはご紹介した舌の訓練以外にも口唇、咀嚼筋の訓練(※)などがあります。矯正治療と併用して行われることがありますので、舌癖にお困りの方は、まずは歯科医師に相談してみましょう。
(※)このほか、MFTにはスティックティップ、ボタンプル、リップトレーサーといったものもあります。具体的なやり方を知りたい方は、提携医院である札幌のポラリス歯科・矯正歯科の今注目されているMFTとは?のコラムをご参照ください。
舌圧のバランスが気になる場合は歯科医院で相談を

舌圧(舌の力)は、内側から歯並びを支え、外側からの唇や頬の力とバランスを取ることで、きれいな歯並びを維持しています。
この舌圧のバランスが崩れると、歯並びだけでなく、発音や食べ物の飲み込みにも影響が出ることがありますので、まずはご自身の舌の位置をチェックし、気になる点や良くない癖があれば、放置せずに歯科医院で相談してみましょう。
町田歯科では、患者さん一人ひとりのお口の状態を丁寧に拝見し、綿密なカウンセリングに基づいて、それぞれに合った改善策を一緒に考えていきます。
今回のコラムをお読みになって、ご自身の歯並びや舌の癖が気になる方は、お気軽に町田駅すぐそばの町田歯科・矯正歯科にご相談ください。








