お口の健康への関心が高まるにつれて、お子さんの虫歯は減少傾向にあります。しかし、その一方で、歯並びが悪いお子さんは増加傾向にあるようです。
親御さんとしては、ご自身の歯並びが悪いと、お子さんに遺伝するのではないかと心配になりますよね。
確かに、以前は歯並びは遺伝的な要因が強いと考えられていました。しかし、最近の研究では、遺伝的な要因は3割以下とされており、生まれてからの環境要因の影響を大きく受けることがわかっています。
つまり、親御さんの歯並びが直接遺伝する可能性は低いものの、生活習慣や癖が似てしまうことで、結果的に歯並びが悪くなる可能性があるということです。
そこで今回は、歯並びのへの遺伝的影響について解説するとともに、歯並びに影響する習慣についてお伝えします。
歯並びの遺伝的要因
歯並びはどのような遺伝的要因によって決まるのでしょうか。
歯の大きさ
私たちの歯は、すべての乳歯と永久歯の大半が胎内にいる時に作られはじめています。このため、歯の大きさは、ある程度遺伝的な影響を受けると考えられており、生まれつき歯の大きさが決まっているとも言えるかもしれません。
近年では栄養状態の変化などにより、歯の大きさが大きくなってきていると言われています。もし、顎の大きさに比べて歯が大きすぎると、限られたスペースに大きな歯が押し込められて並ぶスペースが足りず、ガタガタになってしまうことがあります。
顎の大きさ
顎の大きさや形といった骨格も遺伝的影響を受けます。しかし、顎の成長は唇や舌の動きといった、お口周りの筋肉の使い方が大きく関わってきます。
たとえば、よく噛んで食べることは、顎の正常な発達を促します。逆に、口呼吸の癖があると、顎が正常に成長しにくくなることもあります。顎の大きさは遺伝的な要素だけでなく、生活習慣などの環境要因にも大きく左右されるのです。
また、不正咬合の中でも、下の顎が前に出た状態である受け口（下顎前突：かがくぜんとつ）は遺伝的な影響を受けやすいと言われています。このため、両親の両方、もしくは片方がもともと受け口の場合はお子さんもそのリスクが高くなります。
受け口の治療は、矯正治療の中でも少し難しい部類に入ります。なぜなら、下顎は上顎と違って成長期が終わるまで成長し続けるため、一度治療で改善しても、再び受け口に戻ってしまう可能性があるからです。そのため、治療期間が長くなることもあります。
歯並びに影響する習慣
以前のコラムお子さんの歯並びに影響する癖とは？でようにご紹介したように、舌の癖や指しゃぶりは、歯並びに影響する代表的な生活習慣です。今回は改めて、歯並びに影響する習慣を見ていきましょう。
お口ぽかん
お口がいつも開いている「お口ぽかん」のお子さんは、意外と多いのではないでしょうか。大きく口が開いている場合だけでなく、1mmでも唇の間に隙間がある状態も「お口ぽかん」と呼ぶことがあります。
歯は外側から唇が支える力と、内側から舌が押す力のバランスによって正しい位置に保たれています。しかし、お口が常に開いている状態だと唇の力が弱まり、歯並びのバランスが崩れてしまう可能性があるのです。
さらに「お口ぽかん」の状態が続くと、口呼吸になりやすく、風邪を引きやすくなったり、アレルギー症状が出やすくなったりすることもあります。できるだけ早めに改善したい癖の一つです。
舌の癖
舌は筋肉の塊であり、意外と大きな力を持っています。そのため、飲み込む時に舌で前歯を押してしまう癖や、話す時に歯と歯の間に舌を挟む癖、常に舌で前歯を押す癖（舌突出癖：ぜつとっしゅつへき）などがあると、少しずつ歯並びに悪影響を及ぼしてしまうことがあります。
特に注意したいのが舌を前に出して飲み込む癖（乳児嚥下：にゅうじえんげ）です。赤ちゃんの頃の名残ですが、大人になってもこの癖が残っているお子さんも実は少なくありません。
指しゃぶり
指しゃぶり（吸指癖：きゅうしへき）が歯並びに影響すると知っている方は多いと思います。しかし、赤ちゃんの時の指しゃぶりは、心や体の発達にとって大切な役割があるため、無理に止めさせる必要はありません。
ただし、3歳過ぎても指しゃぶりが続くようであれば、少しずつ止めていくように促していくことが大切です。また、指しゃぶりだけでなく、タオルを噛んだり爪を噛んだり（咬爪癖：こうそうへき）といった癖も歯並びに影響します。
姿勢の悪さ
正しい舌を使うためには、正しい姿勢がとても大切です。猫背だったり、首が前に出たような姿勢になったりすると、お口ぽかんになりやすく顎の発達に影響を及ぼす可能性があります。
その他の悪習慣
頬杖をついたり、いつも同じ側を下にしてうつぶせ寝をしていたり、片方の歯ばかりで噛む癖があったりなど、一見何気ない癖も積み重なると、顎の成長や歯並びに悪影響を及ぼすことがあります。
親の生活習慣は遺伝する
歯並びは遺伝的要素より、生まれてからの環境要因が大きく影響します。親御さんとお子さんの歯並びが似ていたり、兄弟で歯並びが似ていたりすることも決して珍しくありません。
その理由の一つとして考えられるのが、親子は生活習慣が似ていることです。お子さんは親御さんと一緒に同じ食事を摂り、親御さんの生活する姿を見て育ちます。もし、親御さんがよく噛まない柔らかい食事を好んでいたり、食べ方に癖があったりすると、その食習慣がお子さんにも影響を与えてしまう可能性があります。
親御さんとお子さんが似たような生活習慣を送ることで、結果的に歯並びも似てくることがあるというわけです。
子どもの歯並びが悪くなってしまったら？
お子さんの歯並びが気になると感じたら、早めの対処が大切です。小児矯正やMFT（口腔筋機能療法）を通じて、歯並びの改善を目指せます。
小児矯正
小児矯正には、大きく分けて5～11歳頃の混合歯列期に行う1期治療と、12～14歳頃の永久歯列期に行う2期治療があります。
1期治療の主な目的は、顎の成長をコントロールし、永久歯が無理なく並ぶためのスペースを確保することです。この時期に適切な治療を行うことで、将来的に矯正治療が必要になった場合でも治療期間が短縮されたり、抜歯をせずに済む可能性が高まります。
2期治療は成人矯正と同様に、歯を一本ずつ動かして歯並びと噛み合わせを整えます。小児矯正については、様々な種類の小児矯正のコラムや、町田歯科の矯正情報特設サイトでも解説していますので、併せてご参照ください。
MFT（口腔筋機能療法）
MFT（口腔筋機能療法）とは、お口周りの筋肉を鍛えることで、正しい歯並びを促すための療法です。筋肉を鍛えることで無意識に行っている口呼吸や舌の位置、唇の閉じ方などを改善し、歯並びを悪くする原因そのものを取り除くことを目指します。
MFTについては、MFT（口腔筋機能療法）をご存知ですか？のコラムで詳しくご紹介していますので、あわせてご参考になさってください。
どの治療法が適しているか、お子さんの成長によって異なります。いずれにしても早めに対処することで、将来的に起こりうるお口のトラブルを回避できる可能性が高くなります。
お子さんの歯並びを守るためにも家族みんなで定期検診へ
お伝えしてきたように、歯並びには遺伝的要素よりも、生まれてからの生活習慣が大きく影響します。
このため、両親の歯並びが悪くてもお子さんの歯並びが悪くなるとは限りません。ただ、その一方で、家族の生活習慣は似ているため、結果的に似た歯並びになることもあります。
歯並びを含めたお子さんのお口の健康のためには、家族みんなで生活習慣を整えることが大切です。たとえば、噛む食事を意識したり、日頃の姿勢を正すことで顎の成長は変化します。
それに加えて、お子さんも親御さんも定期的に歯科検診を受け、歯科医院で適切なアドバイスを受けるようにしましょう。町田歯科には、日本矯正歯科学会認定医のほか、様々な専門医が在籍し、総合的な口腔ケアをご提供いたします。
お子さんの歯並びや、ご自身の生活習慣の歯への影響が気になる方は、お気軽に町田歯科にご相談ください。
