犬歯の重要性
犬歯は糸切り歯とも呼ばれ、前から数えて3番目の歯になります。動物でいえば牙にあたり、歯の先端が少し尖っているような形になっているのが特徴です。
歯根は長く、噛み合わせに重要な役割を果たす犬歯
歯を噛み合わせて、顎を少し左右に動かしてみましょう。どうですか?犬歯が当たり、それ以上は大きく左右に動かせないのではないでしょうか。
これは犬歯が、顎が横にずれてしまわないように、左右の動きを留めているからで、その他の歯や噛み合わせにとって、とても大切な役割を果たしてくれています。
犬歯は噛み合わせや歯並びのガイド
また食事をする時、人の歯は上下に噛み合うだけでなく、左右にも動いて食物をすりつぶします。ただ、人の歯は縦方向からの力には強いものの、横方向にかかる力には弱いという特性があります。
特に奥歯は、歯ぎしりなどで横方向の力がかかるとすり減りやすく、歯並びに悪影響が出てきてしまいます。そんな時、犬歯がしっかりと生えていれば、奥歯を守ってくれ(この働きを犬歯誘導といいます)、顎が必要以上に横にずれてしまうのを防いでもくれるのです。
このように、犬歯は噛み合わせや歯並びのガイドとなる役目を担っており、大変頑丈にできています。犬歯が他の歯と比べて歯根がとりわけ長いのも、それが理由であり、高齢になっても残りやすい歯です。
犬歯を抜歯する必要がある場合
そんな重要な役割を果たす犬歯ですが、やはり他の歯と同様に、虫歯にも歯周病にもなります。それらが悪化してしまった場合には、残念ながら抜歯の対象となります。
その他にも、ケガや転倒による外傷などが原因で、歯が割れたり、折れてしまった(歯牙破折:しがはせつ)場合にも、状況によっては抜歯を行うことがあります。
犬歯をあえて抜歯しない場合
上記の場合には抜歯を検討せざるを得ませんが、その重要性から、基本的に犬歯は可能な限り残すように心がけます。
例えば八重歯など、犬歯の位置が悪い場合がありますが、このような時は、矯正治療を行って犬歯を残すことがあります。
また、便宜抜歯(べんぎばっし)とは?のコラムで詳しく解説しましたが、あえて他の歯を抜歯し、犬歯を適正な位置に矯正ことも検討します。抜歯すべきか悩む場合には、まずは歯科医院で相談しましょう。
犬歯を抜歯した後の治療
残念ながら犬歯を何らかの理由で抜歯せざるを得ない場合、その後の治療としてはいくつかの選択肢があります。基本的には入れ歯、ブリッジ、インプラントのどれかが候補に挙がります。各々長所と短所があるため、先にメリット・デメリットを列挙し、解説していきましょう。
犬歯を抜歯した後の治療:入れ歯
入れ歯のメリット
- 他の歯を削る量が少ない
- 他の治療方法と比較して安価
- 短期間で治療が終わる
入れ歯のデメリット
- 見た目が悪く、違和感がある
- 他の歯に負担が掛かる
- 自分の歯と同じようには噛みにくい
入れ歯は他の歯を削る量も少なく、保険適用であれば安価で作成できるのがメリットです。治療期間も他の治療法と比べて短くて済みます。
ただ、保険適用の入れ歯は、金属の針金が入れ歯の維持・安定のために必ず付与されるのですが、歯を失った前後の歯に針金をかけることになるため、見た目に影響を及ぼします。
また、入れ歯は完全に顎に固定されるものではありませんので、咀嚼の際に動いてしまったり、自分の歯のようにしっかり噛むことは難しくなります。
犬歯を抜歯した後の治療:ブリッジ
ブリッジのメリット
- 自分の歯と同様に噛める
- 見た目はさほど悪くない
- 取り外し不要で違和感が少ない
ブリッジのデメリット
- 他の歯を削る量が多い
- 前歯も削る必要がある
- 入れ歯と比較してやや高額
ブリッジは選ばれることが多い治療法です。取り外しが不要であり、他の自分の歯と同じように噛むことができるのはブリッジのメリットでしょう。
しかし、犬歯を失った場合のブリッジは他の歯と大きく異なり、通常のように3本で1つのブリッジを構成するではなく、4本で1つのブリッジとなります。
また、犬歯を失った場合には先頭にある前歯(中切歯:ちゅうせっし)も削る必要があります。自分の綺麗な歯の場合、前歯を削るのは躊躇する方も多いでしょう。
ブリッジの場合は、どうしても歯を削る時には大きく削ることになり、神経を取り除かなくてはならないこともあります。
犬歯を抜歯した後の治療:インプラント
インプラントのメリット
- 自分の歯と同じくしっかり噛める
- 見た目が美しい
- 他の歯を基本的に削らない
インプラントのデメリット
- 外科治療が必要
- 治療期間が長い
- 自費診療のため高額になる
インプラントのメリットは、やはり自分の歯と変わらずしっかりと噛める点が挙げられます。そして審美性を求めるインプラント治療とはのコラムでもご説明したとおり、上部構造と呼ばれる人工歯の部分をセラミックにすれば、色調も自然で、白く美しい歯に仕上がるのもインプラントの特長でしょう。
また、他の歯も削りません。これも犬歯を失った際には特筆すべきメリットになります。先ほどお伝えしたように、ブリッジの場合は前歯(中切歯)も削らざるを得ないので、こういった処置が一切ないのは、インプラント治療ならではの良さと言えます。
デメリットとしては、他の治療にはない外科治療が必要であることや、治療期間が長くなりやすいことが挙げられます。そして全身疾患などがある方は、インプラント治療を受けられないこともあります。
この辺りについては、インプラントの手術リスクと安全性、インプラント治療の流れと治療期間、インプラント治療を受ける前に必要な検査の各コラムで詳しく解説しておりますので、併せてご参照ください。
このほか、インプラントは自費診療のため、一般的に費用が高額と言われます。しかし、ブリッジによる治療で、審美性を考慮した自費診療の素材を選択した場合には、4本分の金額が必要になるため、インプラントと大差がない金額になるケースもあります。
犬歯を抜歯する際も、患者さん一人一人に合った治療法を
今回は大切な犬歯の役割と、その犬歯を抜歯せざるを得ない時に、どのような方法があるかをご説明しました。いくつかの方法の中で、どれを選ぶのが良いか悩む際には、何に最も重きを置くかを考えてみてください。
噛みやすさという機能性や、見た目の美しさという審美性に重きを置くなら、やはりインプラントが最適でしょう。しかし、治療期間やコストを考えるなら、入れ歯やブリッジも選択肢に挙がります。
大切なのは、患者さん一人一人の歯の状態と、ニーズに合った治療を選択することです。町田歯科では、患者さんとの綿密なカウンセリングを通し、ご納得いただいた後に治療に入ります。
今回お伝えしたように、犬歯は歯並びや噛み合わせにとって、大変重要な歯になります。だからこそ、当院では徹底して丁寧な治療をご提供いたします。虫歯や歯周病、ケガなどで犬歯が傷んでしまった場合でも、安心してまずは町田歯科にご相談ください。