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歯の治療全般

人の歯の変遷、そして未来

生物は、誕生以降、進化とそれに伴う変化を常に繰り返してきました。もちろん私たち人類も同様です。長い間をかけて、その時々の環境に適応した状態へと体の各所は変化し、未来はもっと別の形になっているかもしれません。

いきなり壮大なテーマで驚かれたかもしれませんね(笑)。もちろん未来の人類の姿を想像するのは難しいものですが、実は歯に関しては、変化の兆候が少しずつ現れてきているんです。

今回は、人類の歯がどのように変化してきたか、そして未来はどのようになっているかを考えてみようと思います。

人間の歯

人類は、肉も野菜も食べます。このため、肉食動物と草食動物の両方の歯の特徴を備えています。つまり、肉を食べやすい前歯と、野菜をすりつぶしやすい平らな奥歯です。

人間の歯の構成

肉と比べると、繊維質の多い野菜を食べるのは大変です。野菜を噛むのに適した臼歯は、小臼歯が2種類、大臼歯が2~3種類あります。それらを上下左右で合計すると、小臼歯は8本、大臼歯は8~12本になります。

一方、肉を切るのに必要な前歯は3種類であり、全部で12本しかありません。人間の歯は、このような構成になっています。

人類の進化と歯の関係

歯の本数の変化

人類の歯の本数の変化

ヒトは、猿と共通の祖先から進化して今に至ります。およそ6500万年前に原猿類(げんえんるい)が誕生し、広鼻猿類(こうびえんるい)、狭鼻猿類(きょうびえんるい)、類人猿と進化が続き、その後に原人、旧人、そして新人が現れます。

現在の私たちホモサピエンス(新人)は、このような進化の末に誕生しました。各段階での歯の本数は、化石を見るとわかりますが、少しずつ減少しています。

実際に歯の本数を計測すると、原猿類は38本、広鼻猿類は36本、狭鼻猿類は32本です。進化とともに歯の本数が減っているのがわかります。

ただ、狭鼻猿類の後はあまり変わっておらず、今の人類の歯も32本です。

歯の大きさの変化

人類の歯の大きさの変化

歯の数が少しずつ減っていったわけですが、歯の大きさの方はどうでしょうか。例として、今から40万~4万年前の旧石器時代を生きていた旧人である、ネアンデルタール人の化石を調べると、ネアンデルタール人の歯は、ホモサピエンスの歯よりもかなり大きかったのがわかります。

現在の人類の中でも、歯の大きさは人種によって差があり、アフリカ人の歯は大きいとされています。アフリカ人は、前歯から奥歯までの歯の横幅の合計値が、おおよそ120mmくらいです。私たち日本人は115mmほどになります。

一方、ネアンデルタール人は130mmでした。ネアンデルタール人の歯は、日本人よりも一まわり大きかったのです。

なお、ネアンデルタール人よりさらに前、400万~200万年前のアウストラロピテクスは、さらに一まわり、特に奥歯のサイズが大きい歯を持っていました。進化とともに、歯のサイズは少しずつ小さくなってきたのです。

ただし、ホモサピエンスの一種であるクロマニヨン人の歯の大きさは、現在の私たちとほとんど変わりません。クロマニヨン人は4万~1万年ほど前の人類なので、小さくなってきた歯の大きさは、この頃に下げ止まったと言えそうです。

歯の変化の理由

歯の変化の理由は、人類が火を使って調理することを覚えたから

歯がどうして変化しているのでしょうか?その理由は、人類が火を使って調理することを覚えたからです。

火を使って調理すると、肉も野菜もやわらかくなり、あまり噛まなくても食べられるようになります。噛む必要性が減ると、歯や顎の骨を強くする必要性も低下します。

歯や顎の骨の成長・維持のために使う栄養を減らし、その栄養を他の部分に回す方が、効率が良くなってきます。このため、まず野菜をしっかり噛むために必要だった臼歯が減り、顎の骨が小さくなっていると考えられています。

未来の人類の歯はどうなる?

では、これから私たち人類の歯は、どのようになると予想されるのでしょうか?

未来の人類の歯の本数は?

現在、私たちの歯は、親知らずを含めると32本、含めなければ28本です。他の町田歯科のコラムでも触れていますが、現代人の歯の本数は、28~32本と定義されています。

なぜ、親知らずを含めない場合を考えるのかというと、親知らずは退化傾向にある歯だからです。親知らずは他の歯と比べると、大きさや形における個人差が大きくなっています。

奥歯も前歯も本数が減ってきている

奥歯も前歯も本数が減ってきている

歯科治療の現場にいても、歯の数は減りつつあると感じることが増えてきました。近年、受診される方の中に、親知らずの手前の第二大臼歯という歯が、親知らずと同様、斜めに埋まっているケースが散見されています。

縄文時代や弥生時代の化石を調べると、親知らずの形は今と同じなのですが、現代人と同じように斜めに埋まるなど、きちんと生えてこない骨が認められており、この傾向が第二大臼歯に現れていると考えると、いずれ第二大臼歯も退化が始まる可能性が高いでしょう。

さらに前歯に関しても、側切歯(そくせっし)という2番目の歯がない人が増えているようです。これらの兆候を見る限り、人類の歯の数は、20~28本とさらに減っていくことでしょう。

未来の人類の歯の大きさは?

未来の人類の歯の本数が減るとして、大きさの方はどうでしょうか?

歯は骨以上に進化における変化が生じにくいと言われています。実際、ホモサピエンスの歯の大きさは、数万年前からあまり変わっていません。

歯の大きさが小さくなるのは、おそらく数十万年先と思われ、その頃には、今の人類はもう滅んでいる可能性もあり、人類の歯の大きさについては、当分変わらないと考えて良いでしょう。

減っていく人類の歯

ご年配の方が若い方を見て、「昔の人より顎の大きさが小さくなった」と感じることがあるそうです。理由として「硬いものを食べなくなったからでは?」とおっしゃる方もいますが、人類の進化に照らし合わせても、あながち間違ってはいないかもしれません。

実際、今回のように歴史を振り返ってみても、私たちの歯は、長い年月をかけて少しずつ減っています。脳が発達し、火に加えて様々な道具を自在に操れるようになったことが、『噛む』必要性を低下させています。

さすがに、歯が全てなくなることはないかもしれませんが、未来の人類は、今より歯が少なくなり、顎もさらに小さくなっているのでしょう。

今ある歯を大切にするのは忘れずに

文明が発達した現代の先進国には、美味しいものや食べやすいものがたくさんあります。それは素晴らしいことなのですが、甘いものや柔らかいものばかりを食べる食生活になってしまうと、歯に悪い影響が出てきます。

厚生労働省の歯科疾患実態調査によると、歯周病は増加傾向に

歯周病治療のページでもお伝えしているように、日本では15歳以上の80%近くが歯周病に感染していると言われており、厚生労働省の調査でも、歯周病が増加傾向にあることがわかっています。

たしかに人類の歯は変化していくのが明らかですが、それは長い時間をかけて行われること。現在のご自身の歯は、しっかりケアするのを忘れないでくださいね。

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