令和6年度に歯科診療報酬改定が行われました。診療報酬とは、医療機関で受けた医療サービスに対して支払う費用のことです。2年に一度、医療の進歩や社会情勢を踏まえて、費用や医療サービスなどが見直されます。
今回の改定では新たに『口腔管理体制強化加算(口管強:こうかんきょう)』という制度が加わりました。漢字ばかりで、なんだか難しそうな名称ですよね。
そこで今回は、この口管強(こうかんきょう)について、どのような制度なのかを詳しくご紹介していきます。
口管強とは
冒頭でお伝えしたとおり、口管強(こうかんきょう)とは、口腔管理体制強化加算の略称です。歯周病や虫歯を防ぎ、歯を失うリスクを低減することを目的としています。
常々お伝えしているとおり、虫歯や歯周病は、発見が遅れると歯の喪失につながる厄介な病気です。病状が進行すれば治療が複雑化し、治療期間も長くなり、治療費も高額になってしまいます。
予防歯科が今注目される理由って?のコラムで解説しましたが、大切な歯を少しでも長く保つためには、トラブルが起こる前に歯科医院を受診し、適切な予防歯科を受けることが一番と言えるでしょう。
そこで、国が国民の健康維持活動のために新設した制度が口管強です。口管強の認定を受けている歯科医院であれば、保険を適用して予防歯科の受診が可能になります。大切な歯を長く保つための予防措置を、より身近なものとして受診できるわけですね。
町田歯科は口管強の認定を受けています
ただ、口管強の認定を受けるには、外来診療や訪問診療の体制強化など、厚生労働省が定めた厳しい認定基準をクリアしなければいけません。
そのため、口管強の認定を受けている歯科医院は全国でわずか10%程度とも言われ、一定の施設基準を満たした診療所のみが口管強の認定を受けることができます。もちろん町田歯科は口管強の認定を受けていますので、安心してご相談ください。
口管強とか強診の違い
実は、口管強には前身があり、以前は「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)」という名称でした。か強診は、平成28年の歯科診療報酬改定時にできた制度です。
か強診も口管強も「歯周病や虫歯を予防し、歯を失うリスクの低減させる」といった目的は同じです。しかし、今回の改正において、新基準を満たすために新しい施設基準が設けられました。
- (主に高齢者の)口腔機能低下への対応ができているか
- 小児の心身の特性に対する研修が行われているか
この二点が口管強のポイントで、か強診の基準から追加変更されています。つまり、今後の歯科医療の方向性としては、①高齢者の口腔機能低下の予防・改善を行うこと、そして、②お子さんの成長過程における、口腔周囲の発達不全を予防・改善すること。この二つを重視しているのです。正しく少子高齢化が一気に進む日本の実情に即しての判断とも言えるでしょう。
高齢者の口腔機能管理について
先ほど、高齢者の口腔機能低下の予防・改善と書きましたが、特に高齢者の多い日本では、オーラルフレイル(加齢に伴う口腔機能の衰え)への対策が急務であり、日本歯科医師会も積極的な啓蒙活動を行っています。
そこで、ここでは高齢者のお口の機能低下を防ぐための、口腔機能管理にフォーカスしてお話しします。
口腔機能の低下が気になる方
口腔機能管理は、50歳以上の口腔機能低下症に対して行われるものです。以下に該当する項目がある方は、注意してください。
- 最近食べこぼしが多くなった
- 食事の時間が長くなった
- 口がよく乾く
- 滑舌が悪くなった
- 硬いものが食べにくい
これらが気になる方は、感覚、咀嚼(そしゃく)、嚥下(えんげ:飲み込むこと)、唾液分泌などの機能が低下している可能性がありますので、歯科医院で相談し、適切な処置を行いましょう。
口腔機能検査
より具体的には、以下の7つの項目について検査をしていきます。3項目以上が該当する場合に口腔機能低下症が疑われます。
口腔衛生状態不良 | 口内の汚れや、舌苔(ぜったい:舌の表面に付着するコケのようなもの)の付着度を確認します。 |
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口腔乾燥 | 口腔水分計による計測や、唾液分泌量を確認します。 |
舌口唇運動機能低下(ぜつこうしんうんどうきのうていか) | オーラルディアドコキネシス(発音による運動機能のチェック。後述します) |
咀嚼機能低下 | グミやゼリーなどを用いて、咀嚼機能を検査します。 |
咬合力低下(こうごうりょくていか) | 咬合力とは噛み合わせの力のことを指し、感圧フィルムを使用して咬合力の度合いを検査します。また、残っている歯の本数も確認します。 |
低舌圧(ていぜつあつ) | 舌圧とは、舌が上あごに接触する力のことで、低下すると食物を噛んで飲み込むことに影響が出てきます。この舌圧を、舌圧測定器によって検査します。 |
嚥下機能低下 | 嚥下スクリーニング検査などを行います。 |
より詳しくは、一般社団法人 日本老年歯科医学会のPDFに記載がありますので、興味のある方は併せてご参照ください。
口腔機能管理のセルフチェック
口腔機能低下症を疑う場合、厳密には歯科医院などの専門機関で検査を行うことになりますが、ご自身でもできるテストがあります。
それが上述のオーラルディアドコキネシス(oral diadochokinesis)と呼ばれるお口周りの運動機能をチェックするもので、具体的にはパ・タ・カ、それぞれを10秒の間にできるだけ早く発音します。各々の発音には以下の意味があり、その回数をチェックすることで、各運動機能の確認ができます。
- パ:口唇の運動機能
- タ:舌前方の運動機能
- カ:舌後方の運動機能
パ・タ・カ、それぞれを10秒間発音して1秒当たりの発音回数を求め、いずれかの発音が6回未満の場合、舌口唇運動機能が低下している可能性があります。正確な回数の計測には専用機器を用いますが、気になる方は試してみると良いでしょう。
口管強のメリット
保険適用で予防歯科が受けられる
冒頭でお話ししましたが、高齢者やお子さんの虫歯予防に効果がある歯のクリーニングやフッ素塗布などの予防歯科が保険適用になりますので、費用を抑えて質の高い予防治療を受けることができます。
在宅での訪問診療が保険適用で受けられる
高齢者や、お身体が不自由で歯科医院への通院が難しい方も、訪問診療での口腔ケアやリハビリ、歯科治療などを保険適用で受診することが可能です。
歯科医院の品質が担保されている
口管強の認定を受けた歯科医院では、使用する医療機器は専用の機械で滅菌処理し、清潔な環境下で保管することが求められます。また、他の医療機関との連携はもちろんのこと、AEDや酸素供給装置なども完備しています。患者さんにとって、安心して通院できる医療体制が整っていると言えるでしょう。
口管強の認定を受けている町田歯科は、患者さんの口腔機能を守ることを大切にしています
今回は口腔管理体制強化加算(口管強)について解説しました。口管強は令和6年の歯科診療報酬改訂で出てきた新しい制度のため、まだまだ認知度が低いかもしれません。
今回の診療報酬改訂では、治療材料における制約の緩和や保険点数の一部改定など幅広い項目が変更されています。
町田歯科では、最新の治療機器を用意し、口腔疾患の重症化予防、口腔機能低下への対応に加え、患者さんのQOL(生活の質)向上につながる総合的な歯科医療を提供いたします。
今回お伝えしたような症状がある方や、口腔機能について気になる方は、お気軽に町田歯科にご連絡ください。