矯正治療をしたら「ほうれい線が濃くなった」、または「薄くなった」という声を耳にしたことがあるかもしれません。ほうれい線は年齢を感じさせる大きな要因の一つであるため、気になる方も多いのではないでしょうか。
矯正治療では、歯が動くことで口元の筋肉や骨格のバランスが変化します。そのため、ほうれい線の深さや見え方に影響が出る場合があります。
ただ、矯正治療はほうれい線に直接関係するものではありません。 治療によって口元の変化が起きることで、ほうれい線が濃く見えたり、逆に目立たなくなったりするということです。
では、具体的にどのような影響があるのでしょうか?今回は、矯正治療とほうれい線との関係について紹介します。
ほうれい線ができる理由
ほうれい線とは、頬と鼻のあいだの口角に向かって伸びる線のことです。年齢を重ねると、深く刻まれて、顔全体が老けて見えやすくなります。
では、なぜほうれい線はできるのでしょうか?大きく分けて、肌の乾燥やたるみと、表情筋の衰えが原因と考えられています。それぞれ詳しく見ていきましょう。
肌の乾燥・たるみ
肌の水分が不足すると弾力が失われ、ダメージを受けやすい状態になります。さらに、肌のハリを保つコラーゲンやエラスチンといった成分が減少すると、肌がたるみ始め、ほうれい線が深くなってしまうのです。紫外線によるダメージもこれらの成分を減少させる要因となります。
表情筋の委縮
顔には、表情を作るためのたくさんの筋肉である表情筋が存在しています。この表情筋は、皮膚を内側から支えています。
しかし、加齢や生活習慣によって表情筋が衰えると、皮膚を支える力が弱まり、頬のたるみやほうれい線が強調されて見えるようになってきてしまいます。また、同じ表情を長時間続ける癖なども、ほうれい線の形成を促す可能性があります。
矯正治療でほうれい線が目立つケース
矯正治療を行うと、歯並びが整う一方で、筋肉のバランスが変化し、ほうれい線が濃くなってしまうことがあります。ほうれい線が濃くなりやすいケースについて、以下でご説明しましょう。
出っ歯(上顎前突)
もともと上の前歯が前に出ている出っ歯(上顎前突:じょうがくぜんとつ)は、鼻の下の皮膚が、前歯によって内側から押し上げられている状態です。
矯正治療で前歯を後ろに移動させると、それまで押し上げられていた皮膚が余ってしまうため、ほうれい線がより目立つようになることがあります。 これは、ほうれい線が深くなるというよりも皮膚のたるみによって影が強調されるためです。
八重歯(叢生、乱杭歯)
八重歯とは、犬歯(前から3番目の歯)が前に飛び出している状態です。犬歯はほうれい線のすぐ下に位置しているため、八重歯の人は、この部分の皮膚が常に引っ張られており、ほうれい線が比較的目立ちにくい傾向があります。
しかし、矯正治療で犬歯を正しい位置に移動させると、これまで引っ張られていた皮膚が元の状態に戻ることで、ほうれい線の影がよりはっきりと見えるようになることがあります。
抜歯して矯正治療をした場合
歯を並べるスペースが足りない場合、抜歯をしてスペースを作ってから矯正治療を行うことがあります。以前、コラムでも解説しましたが、これを便宜抜歯(べんぎばっし)といいます。
便宜抜歯を行うと、抜歯によって空いたスペースを埋めるため、前歯が内側に移動することがあり、内側から皮膚を支える力が弱まるので、皮膚がたるんで、ほうれい線が濃く見えることがあります。
矯正治療でほうれい線が薄くなるケース
ここまで、矯正治療によってほうれい線が濃くなるケースをご紹介してきました。矯正治療によってほうれい線が悪化してしまうのでは?…と心配に思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、歯並びの改善によって、ほうれい線が薄くなるケースもあるのです。
噛み合わせの改善による効果
矯正治療によって歯並びが改善されると、噛み合わせも良くなります。 噛み合わせが良くなると、食事の際に左右の筋肉を均等に使うことができるようにもなってきます。
すると、それが表情筋をバランス良く鍛えることにつながり、結果としてほうれい線が薄くなる効果も期待できます。 特に、以前は片側だけで噛んでいた方は実感しやすいはずです。
笑顔が増えることによる効果
矯正治療を考えている方からは、「歯並びが悪いことがコンプレックスで、人前でなかなか笑えない」「笑う時はつい口元を隠してしまう」という声も多く頂戴します。
このような方が矯正治療で歯並びが良くなると、笑顔に自信が持てて、口を開けてしっかり笑えるようになります。
笑顔を作る動作は、表情筋を積極的に動かす行為です。 表情筋が鍛えられることで、顔の筋肉の衰えを防げるようになると、ほうれい線の予防や改善にもつながっていきます。
ほうれい線を目立ちにくくするために
矯正後、ほうれい線を目立ちにくくするためには、治療前後のケアが大切です。 ここでは、ほうれい線が気になる方が、矯正治療を受ける場合のポイントをご紹介します
事前に歯科医院で相談
矯正治療によって、ほうれい線が濃くなる場合もあれば薄くなる場合もあります。 元の歯並びや治療方法によって、術後の表情は変化するため、治療を受ける前に担当の歯科医師と十分に相談することが重要です。
ほうれい線が気になる場合は、その点をしっかり伝え、治療計画について丁寧に説明してもらいましょう。
左右均等に噛む
矯正治療中は、人によっては痛みが出ることから、柔らかい食べ物だけを食べるようになったり、片側だけで噛む癖がついたりすることがあります。
このような癖は、顔の筋肉のバランスを崩してしまい、ほうれい線を目立ちやすくしてしまうため、注意が必要です。 なるべく治療中も意識的に左右均等に噛むように心がけましょう。
表情筋を鍛える
たくさん笑ったり、話す時に口の筋肉を使うことを意識するだけで表情筋は鍛えられます。また、舌を唇側の歯ぐきに沿わせて舌を回す「舌回し体操」なども効果的です。
歯磨きなどのついでに行うことで無理なく続けられます。 そのほか、顔ヨガなども効果的ですので、自分の生活スタイルに合った方法を見つけてみましょう。
気になることはきちんと伝え、納得できる矯正治療を
矯正治療で歯並びが良くなっても、ほうれい線が目立つようになると、残念な気持ちにもなってしまいかねません。
今回お伝えしたように、元々の歯並びや治療法によっては、ほうれい線が目立ちやすくなることもありますので、事前にそのリスクについてしっかりと相談し、納得したうえで治療を開始しましょう。
もちろん町田歯科・矯正歯科では、矯正専門医による患者さん一人一人との綿密なカウンセリングを大切にしておりますので、気になることは、何でもお気軽におっしゃってください。
また、表情筋を鍛えたり、お肌のケアをしっかりすることで、ほうれい線は目立ちにくくなります。日々のセルフケアも併せて意識してみてくださいね。