インプラント治療は、顎の骨の中にチタン製の人工歯根(インプラント体)を埋め込み、その上に人工歯を装着して噛めるようにする方法です。
これまで様々なインプラントコラムで触れてきたように、見た目が自然でしっかりと噛めるというメリットがある一方、外科手術によって、インプラントを骨に固定する必要があります。
このインプラントと骨が結合する現象のことをオッセオインテグレーションといいますが、実は、正常なオッセオインテグレーションこそがインプラント治療のカギと言っても良いほど大切なものなのです。
そこで今回は、そんなオッセオインテグレーションについて、詳しく解説します。
オッセオインテグレーションとは
現在のインプラントは、主にチタンで作られています。そして、今回のテーマであるオッセオインテグレーションとは、チタンと骨が一体化する現象のことを指します。
ラテン語で骨はオス(os)、英語で一体化はインテグレーション(integration)といいますが、オッセオインテグレーションは、この2つの言葉を組み合わせて作られた造語なのです。
チタンと骨が結合することを発見したのは、スウェーデンの医師であるブローネマルク氏で、現代インプラントの父とも呼ばれています。彼の発見がなければ、現在のインプラント治療はなかったと言えるでしょう。
オッセオインテグレーションの仕組み
インプラントは埋入後にすぐに骨と結合するわけではなく、最初はネジのような凹凸と摩擦力だけで骨の中に止まっています。
その後3~4週間でオッセオインテグレーションが始まり、下顎で3ヶ月、上顎で6ヶ月ほどの時間をかけて、骨とゆっくり結合していきます。
物理結合と水素結合
インプラントの表面は、チタンが酸化した酸化膜で覆われています。この酸化膜には骨の細胞を引き寄せる効果があるため、インプラントを埋入すると、骨細胞とチタンの酸化膜が結合しようとします。この作用をオッセオインテグレーションにおける物理結合といいます。
さらに、血液中の水分に存在する水素イオンが、インプラント表面の酸化膜と骨の結合を促進します。こちらの作用を水素結合といいます。
これらの働きによって骨細胞がインプラントとしっかり結びつき、骨に固定されることで、インプラントが噛む力に耐えられるようになるのです。
確実なオッセオインテグレーションを獲得するためのポイント
オッセオインテグレーションの成功には、いくつかの条件があります。
術中の摩擦熱を防ぐ
インプラントを埋入する際は、ドリルを使って骨に穴を開けるのですが、その際に摩擦熱が生じてしまうことがあります。そうなると、骨が火傷をしたような状態となり、骨組織が壊死して結合が難しくなってしまいます。
そのため、注水下で患部を冷却しながら、ゆっくりとインプラントを埋め込むことで摩擦熱の発生を防ぐようにするのが大切です。
口腔内を清潔に保つ
口腔内に磨き残しが多いと、インプラントの周囲に細菌が繁殖しやすくなります。細菌の繁殖はオッセオインテグレーションの妨げになる場合があるため、毎日のセルフケアを徹底しましょう。
歯ブラシに加え、歯間ブラシやデンタルフロスも併用して、日頃から丁寧な歯磨きを心がけてください。虫歯や歯周病がある方は、先にそれらの治療を受けてから、インプラント治療に臨むようにしましょう。
歯間ブラシやデンタルフロスの使い方については、デンタルフロスはどう使う?や、使っていますか?デンタルフロスや歯間ブラシのコラムで詳しく解説しておりますので、併せてご参照ください。
骨に過剰な力を加えない
術後は治療箇所に強い衝撃や過度な力を加えないように気をつけてください。オッセオインテグレーションが進んでいない状態で骨に過剰な力が加わると、骨や周囲組織の治癒が進まず、骨との結合が上手くいかなくなる可能性があるからです。
オッセオインテグレーションが完了するまでの数ヶ月間は、舌や指で患部を触らない、硬い食べ物を避けるなど、患部に負荷がかからないように配慮する必要があります。
インプラントを正確な位置に埋入する
インプラント体を正しい位置・角度に埋入することも、オッセオインテグレーションが成功する条件の一つです。治療計画と異なる位置や角度でインプラントが埋入されると、無理な力が加わり、骨との結合の妨げとなる場合があります。
インプラント治療を成功させるには、患者さんの口腔内の状態を正確に把握することが重要です。歯科用CTスキャンやレントゲンなどを駆使し、インプラントを正しい位置に埋入できるよう、しっかりと事前に検査することで、人的なミスを最小限に抑えられます。
町田歯科では、世界的なインプラントメーカーであるストローマン社のガイドシステムを使用し、より精密な検査と診断を行っておりますので、安心してお任せいただければと思います。
より具体的な検査内容につきましては、インプラント治療を受ける前に必要な検査のコラムでも詳しく解説しておりますので、併せてご参照ください。
持病や生活習慣の改善
このほか、持病や生活習慣が正常なオッセオインテグレーションを妨げる原因になることもあります。
たとえば糖尿病の方は、細菌感染が起きやすく、傷の治癒も遅くなる場合があるため、インプラントと骨の結合が正常に進みにくくなることも考えられます。インプラント治療の前に、まずは糖尿病の治療を優先するようにしましょう。
また、喫煙習慣も良くありません。タバコに含まれるニコチンは、血管を収縮する作用があるため、インプラント周辺の血流が悪くなります。血流が悪くなると、正常なオッセオインテグレーションが妨げられてしまいます。
インプラントだけでなく、自然の歯にもタバコは良くありませんので、健康的なライフスタイルのためにも、やはり禁煙することをおすすめします。
もしオッセオインテグレーションが成立しなかったら?
何らかの理由により、オッセオインテグレーションが成立しないこともあります。その場合は、残念ですがいったんインプラントを撤去しなければなりません。
インプラント撤去後は、インプラントの再治療、もしくはブリッジや入れ歯など、インプラント以外の方法も視野に入れた治療計画を検討する必要があります。
正常なオッセオインテグレーションのために
インプラントは、オッセオインテグレーションの働きにより、時間をかけて顎の骨と一体化します。そして、このオッセオインテグレーションが上手くいくかどうかが、インプラント治療における重要なポイントになります。
骨の質やお口の状態にもよりますが、術後3ヶ月〜6ヶ月間はインプラントに負荷をかけないように注意し、適切なケアに取り組むようにしてください。正しい対応をすることで、正常なオッセオインテグレーションが促進され、インプラントが安定するようになります。
トップページでもお伝えしているとおり、町田歯科・矯正歯科には、インプラント治療経験30年以上の歯科医師や、インプラントを専門に研究した歯学博士も在籍しております。豊富な経験と知識のもと、患者さん一人一人の状態に合わせた安全性の高い治療を提供いたしますので、町田でインプラントをお考えの方も、町田歯科にお気軽にご相談ください。