インプラントというと、失った歯の代わりに人口の歯を埋め込み、噛み合わせを回復させる治療というイメージがあるかと思います。
もちろん、機能面での一番の目的はそうなのですが、近年ではインプラントに美しさを求める声も高くなってきました。せっかくインプラントを入れるのなら、きれいな歯にしたいということですね。
そのため、審美性も重視したインプラント治療が注目を集めています。今回は、そんなインプラント治療による審美性の向上についてご紹介します。
歯科治療における審美性
そもそも歯科治療における審美性、つまり歯に求められる美しさとは、何を指しているのでしょうか?詳しくは審美歯科のページも併せてご覧いただくとして、ここではもう少し具体的に説明しましょう。
歯の色調
歯の美しさで最も基本となるものの一つのが、歯の色合いです。ほとんどの方は「白い歯がきれい」というイメージをお持ちかと思いますが、実は、歯の色は単に白ければ良いというわけではありません。
特定の歯だけ白さが目立てば歯並びから浮いてしまいますし、反対に白さが足りない場合は、周囲の歯よりもくすんだ印象になってしまいます。
つまり、他の歯の色と調和の取れた白さが大切なのです。しかも、歯の根元から先端まで一定の白さでは、かえって不自然です。
審美性を高く保つためには、他の歯と調和の取れた白さで、かつ他の歯と同じようなグラデーションも備えた色調でなければなりません。
歯の光沢感
歯の最も外側を構成しているエナメル質は半透明なので、本来の歯の白さには、自然な光沢感が備わっています。
この光沢感は、強すぎても不自然ですし、薄すぎるとのっぺりとした印象になってしまいます。歯に自然な光沢感があることも、審美性の重要な要素です。
歯の形状
インプラントの場合、本来の歯が失われた箇所に、人工物を使って新たな歯を作り上げるわけですから、その形状も周囲の歯と違和感のないものにしなくてはなりません。
歯は、中切歯、側切歯、犬歯、第一小臼歯、第二小臼歯、第一大臼歯、第二大臼歯、第三大臼歯と8種類あるうえ、上顎と下顎では全く形が異なります。もちろん個人差があり、同じ種類の歯でも、人によって形に違いがあります。
歯の形を自然な印象に仕上げるには、歯の種類を合わせると同時に、左右で対称的な形、他の歯と比べてバランスの取れた大きさにする必要があります。
歯肉の形態
歯の色合い、形や大きさに加えて、インプラントの場合は歯肉の印象が不自然にならないようにすることも重要です。
歯肉が下がっていると歯が長く見えますし、反対に歯肉が盛り上がっていると、炎症を起こしているように見えてしまいます。歯と歯の間の歯肉も、自然な感じでなくてはなりません。
スマイルライン
審美性に影響するのは、歯や歯肉だけではありません。実際に「その歯がどう見えるか」も重要です。
スマイルラインとは、笑った時の上口唇の縁が構成する線のことです。スマイルラインが前歯にどのように重なるのかも審美性を左右します。
笑った時に、唇が前歯を過度に隠さず、歯肉も露出しないのが、前歯の見栄えとしては理想的です。
インプラントの上部構造の審美性
ではここからは、実際にインプラント治療で審美性を高く保つための要素について説明しましょう。
まずインプラントの審美性に大きく関わるのが、上部構造という歯冠部分です。上部構造の素材や色調、形態などによって、インプラントの美しさは変化します。
上部構造の素材
上部構造の素材には多くの選択肢がありますが、審美性を重視するならセラミックがおすすめです。セラミックならば、本来の歯と変わらぬ自然な白さと透明感を再現でき、変色もないなど、多くのメリットがあります。
セラミック素材の特性やメリットについては、白い歯に治せるセラミック治療のコラムで詳しく解説しておりますので、併せてご参照ください。
上部構造の色調
上部構造の色合いを決める場合は、隣の歯、噛み合わせている歯、そして反対側の歯と比べて違和感のない色調にすることがポイントです。
審美性に影響しやすい前歯部なら、先端に行くほど色が薄くなるので、色調に適度なグラデーションを与えることも重要です。
上部構造の形態
インプラントの場合、歯が全くない箇所に上部構造を作るわけですが、ともすると、模型のような完全な歯の形をイメージしてしまいがちです。しかし、実際の歯の形には個性があり、形が整い過ぎているとかえって不自然に見えてしまうのです。
そこで、完成後の上部構造の形を模したプロビジョナルレストレーションという精密な仮歯を作り、テストします。上部構造の完成前に、プロビジョナルレストレーションを製作・テストする過程を介すると、時間はかかりますが、見た目の違和感の有無、噛み合わせの状態、舌や頬とのバランスなどを、総合的にチェックできます。
プロビジョナルレストレーションを用いることで、自然で違和感がなく、機能的にも理想的な形の上部構造を作ることができるのです。
インプラントの歯肉の審美性
前述のとおり、歯科治療における審美性を決める要因としては、歯だけでなく、歯肉の印象も挙げられます。上部構造周辺の歯肉を自然な感じに仕上げるには、同様にいくつかのポイントがあります。
インプラントを支える骨の状態
そもそも歯肉は、骨という土台がなければ成り立ちません。前歯部に比較的多いのですが、インプラントを埋入する周囲の骨が薄い場合、インプラントを埋めた刺激で骨が減少してしまうことがあります。
骨が減ってしまうと、それに伴って歯肉も下がってしまいます。上部構造が大きく見えてしまうだけでなく、下がり方によっては、チタニウムで作られた歯根部分が薄く見えてしまうこともあります。
こういったことを防ぐため、あらかじめインプラント部分の骨の形状を整えておき、歯肉の変形を予防します。患者さんの状況に応じて、インプラント治療の流れと治療期間のコラムで説明した、サイナスリフトなどの骨増生(骨造成)を行うこともあります。
清掃性を高める
インプラントに限らず、虫歯や外傷などで損傷した歯を治療する際には、清掃性が悪いと歯肉が腫れる原因になるため、注意が必要です。
インプラントの上部構造を作る時は、段差がないよう、滑らかに仕上げることで、歯磨きなどの日常のケアもしやすくなり、清掃性が向上します。
また、先ほどお伝えしたセラミックは、保険診療で用いられるコンポジットレジンなどの材料と比べると、プラーク(歯垢)が付着しにくいので、色合いや透明感だけでなく、清掃性の点でも優れています。
清掃性を高めた仕上がりにすることで、歯肉炎も防ぎ、歯肉の形態や色合いを美しく保つことができます。
プロビジョナルレストレーション
前述のプロビジョナルレストレーションは、上部構造の形をシミュレーションするだけではなく、歯肉の調整にも効果があります。
プロビジョナルレストレーションで上部構造と歯肉のバランスが取れるかを確認し、必要に応じて調整することで、歯肉部分の審美性を高めることができます。
見た目にも美しいインプラントのために
今回は、インプラント治療で審美性の高い仕上がりを実現する方法について解説しました。近年では上部構造の材質も進化しており、インプラント治療を行うなら、美しくきれいな歯を同時に手に入れたいという患者さんのニーズにも、応えやすくなってきています。
町田歯科では、噛み合わせという機能面だけではなく、自然で美しい仕上がりが得られるインプラント治療を心がけています。審美性の高いインプラント治療をご希望の方は、町田歯科でぜひご相談ください。