インプラントは骨としっかり結合し、本物の歯のように噛める優れた治療法です。チタンと顎の骨が結合するオッセオインテグレーションを利用して、確実に固定するインプラントですが、時には、使っているうちにインプラントが外れてしまうこともあります。
もし、インプラントが外れてしまったらどうすればいいのでしょうか?そこで今回は、インプラントが外れたり、取れてしまった時の対処法についてご紹介します。
まずはインプラントのどの部分が外れたかを確認しましょう
インプラントは、歯根部分である「インプラント体」、人工歯部分である「上部構造」、そして上部構造とインプラント体を接続する支台となる「アバットメント」の3つの部分で構成されています。
インプラントはその構造上、取れたり外れたりする箇所はそう多くありません。まずは、落ち着いて外れた状態を確認していきましょう。
インプラントの取れた部分が、上部構造(人工歯部分)だけの場合
多いのは、人工歯である上部構造が取れてしまったというケースです。上部構造だけが外れた場合は、お口の中を見ると、歯茎からアバットメントが見えて、その上にあるはずの白い人工歯部分がない状態になります。
また、外れた上部構造を見てみると、内側にアバットメントが入る空洞が見えるはずです。このような状態になっていれば、上部構造だけが外れたと判断できます。
インプラントの取れた部分が、アバットメント(接続パーツ)の場合
アバットメントが上部構造と一緒に外れた場合は、お口の中を見ると、穴の空いたインプラントがむき出しになっている状態になります。
また、外れた上部構造にアバットメントがついている、もしくは上部構造とアバットメントが別々に外れている状況になっているはずです。このような状態であれば、アバットメント部分から外れたと判断して間違いないでしょう。
インプラントの取れた部分が、インプラント体(歯根部分)の場合
最も避けたいのが、顎の骨に埋め込まれたインプラント体が外れてしまうことです。インプラントが外れた状況の中では最も深刻なケースといえます。
インプラント体(歯根部分)が外れた場合、インプラントそのものが取れてしまっているので、外れたものを見ると、ネジの形をした金属の部分がついている状態になっているでしょう。
主な原因は、過去のコラムでもお話ししたインプラント周囲炎です。インプラント周囲炎は、歯周病と同じようにインプラント周囲に細菌感染が起こり、炎症を引き起こす病気です。
歯茎の腫れや出血、膿が出たり、インプラントが揺れたりといった症状が出ることがありますので、このような症状が現れたら、早めに歯科医院を受診しましょう。
インプラントが取れてしまった時の対処法
インプラントが外れてしまった場合は、まずは落ち着いて以下の手順で対処しましょう。
外れたインプラントのパーツを保管する
上部構造・アバットメント・インプラント体(フィクスチャー)など、どの部分が外れたとしても、壊れないように保管して、歯科医院に持参してください。
普通の歯が抜けた時は、歯牙保存液(しがほぞんえき)や牛乳などに入れて保管することが勧められていますが、人工歯のインプラントの場合はそのまま保管しておいていただいて大丈夫です。
ただ、「なくしてしまいそうだから」という理由で小銭入れなどに保管する方もいますが、インプラントが傷つき、雑菌が付着する恐れがあるので止めましょう。
外れてしまったインプラントの部品はプラスチックのケースに入れるのがおすすめですが、利用しやすいケースが身近にない場合は、ジップロックなどジッパーが付いているビニール袋に入れるのも良いでしょう。
お口の中は触らない
インプラントのパーツが外れてしまった時は、取れたパーツだけでなく、お口の中に残された部分も指で触らないようにしてください。指で触るとさらに外れてしまう可能性があるからです。
また、インプラント自体が取れてしまった場合は、傷口に細菌が入り、感染症を引き起こす可能性もあるので、注意が必要です。
残っているアバットメントやインプラントの部分は丁寧に歯磨きし、清潔に保つように心掛けましょう。ただし、力を入れて強く磨かないようにしてください。
インプラントが外れた状況を覚えておく
いつインプラントが外れたのか、どんな時に外れたのかなど、インプラントが外れた際の状況を忘れないようにメモしておきましょう。スマートフォンのメモ機能でも構いません。
状況が正確に分かればインプラントが外れた原因を特定するのに役立ちます。そして、その情報を歯科医師にお伝えください。
食事は反対側の歯で噛む
食事は、インプラントが取れてしまった側とは反対側にある歯を使って食べるようにしてください。インプラントが外れた側の歯で食べ物を噛むと、インプラントの破損がさらに進む可能性があります。
また、硬いものや粘着性の強いものは避け、歯科医院を受診するまでは、インプラントになるべく負担を掛けないようにしましょう。
インプラントが取れた時にしてはいけないこと
インプラントを元に戻そうとしない
外れたインプラントを自分で元に戻そうとするのは絶対に避けましょう。もちろん、接着剤などでくっつけようとするのもいけません。
前歯の上部構造だけが外れた場合、「簡単に戻せそう」とお感じになるかもしれませんが、鏡を見ながらでも、インプラントを戻すのは大変難しいものです。また、自分では正しい向きに入れようとしているつもりでも、インプラントの向きが微妙にずれていることもあります。
もし、正しくない向きで無理に上部構造を入れてしまうと、外れたパーツだけでなく、インプラントのお口に残っている部分も破損する可能性があります。
破損すれば新しいアバットメントに交換しなければならず、部品代がかかることもあります。また、最悪のケースでは再利用できなくなることもあるため、くれぐれも自分で元に戻そうとしないでください。
インプラントが外れたままの状態で放置しない
インプラントが外れたまま放置するのは絶対に避けましょう。外れたインプラントの前後の歯が寄りかかってきたり、噛み合わせている歯が伸びてきたりして、歯並びが変わってしまう可能性があるからです。
また、歯の本数が少なくなった状態で噛まざるを得なくなるので、残った歯に加わる噛み合わせの力が増し、歯が欠けたり割れたりすることもあります。それに加えて、インプラントが外れたままでは見た目も悪くなってしまいます。
インプラントが外れたらそのままにせず、早めにインプラント治療を受けた歯科医院を受診しましょう。
インプラントが取れてしまったら、まずは歯科医院へ相談を
インプラントが取れたり外れたりする箇所は、「上部構造」「アバットメント」「インプラント」のいずれかです。もしインプラントが外れた時は、まずは落ち着いて、以下の手順に沿って対処しましょう。
- 外れたインプラントのパーツを適切に保管
- いつ、どんな状況で外れたか、痛みなどの症状をメモ
- 早めに歯科医院を受診
インプラントが取れたり外れたりするのには、必ず理由があります。様々なインプラントのコラムでお伝えしてきたとおり、町田歯科はインプラント治療についての広い知見と豊富な経験を有しておりますので、「上部構造のネジがすぐに緩む」「何度もアバットメントが外れる」など、インプラントでお困りの方は、一度町田歯科にご相談ください。