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歯の治療全般

災害時の口腔ケアの大切さ

皆さんも覚えていらっしゃると思いますが、2024年の元旦、能登半島地震が発生しました。マグニチュード7.6、最大震度7という巨大な地震により、被災地ではいまだ復興が完了することがなく、多くの方が大変な思いをしていらっしゃいます。

日本は地震や風水害など、多くの自然災害に悩まされる国です。国土技術研究センター(JICE)によると、世界で起こったマグニチュード6以上の地震のうち、実に約2割は日本で発生するというデータもあるほどです。

災害発生からしばらく経つと、被災してしまった方たちから歯科のニーズが高まってきます。実際、日本歯科医師会はJDAT(Japan Dental Alliance Team:日本災害歯科支援チーム)を組織しており、プレスリリースにもあるように、能登半島地震の発生数日後から歯科医師の派遣を行っています。

大規模災害の初動では、人命救助が最優先されるので、自衛隊や救急隊が活動します。メディアでもこのような風景が多く報道されるので、歯科が求められるということはピンと来ないかもしれません。

しかし、災害発生からしばらく経つと、被災してしまった方たちから歯科のニーズが高まってきます。実際、日本歯科医師会はJDAT(Japan Dental Alliance Team:日本災害歯科支援チーム)を組織しており、プレスリリースにもあるように、能登半島地震の発生数日後から歯科医師の派遣を行っています。また、地方自治体に加え、厚生労働省も、災害時のお口のお手入れについて、各種資料を発表しています。

避難所生活で求められる歯科の大切な役割の一つとして、口腔ケアがあります

巨大な自然災害により、家屋を失ってしまった方は、避難所での生活を余儀なくされることも出てきますが、実はこの避難所生活で求められる歯科の大切な役割の一つとして、口腔ケアがあるのです。今回は、そんな災害時の口腔ケアについてご紹介します。

災害時になぜ口腔ケアが求められるのか?

まず、災害時という非常時にどうして口腔ケアが必要になるのか、その理由を説明します。

虫歯や歯周病のリスクを抑える

災害時に口腔ケアが求められる理由:虫歯や歯周病のリスクを抑えるため

これまでも多くのコラムで説明してきたように、虫歯歯周病の原因は、歯の表面についているプラーク(歯垢)というカスのような汚れです。プラークの中には、虫歯や歯周病の原因となる細菌がたくさん存在しています。

避難所の生活では、水道使用も制限されることも多いため、自分の家のように自由に歯磨きを行えるわけではありません。そして歯磨きが疎かになってしまうと、当然のことながらプラークも増えてしまいます。

すると、今まで虫歯や歯周病がなかった人も、急に虫歯や歯周病を発症するようになってしまうのです。

また、歯磨きが不十分なうえ、避難所生活で強いストレスが加わり続けると、お口全体の歯肉が急激に腫れ、重篤な歯肉炎を引き起こすこともあります。歯やお口の健康悪化を防ぐためにも、避難先での口腔ケアは重要です。

肺炎のリスクを防ぐ

災害時に口腔ケアが求められる理由:肺炎のリスクを防ぐため

肺炎は生命を左右しかねないリスクの高い病気なのですが、その原因の一つが口腔内の細菌です。

お口のケアが疎かになると、口腔内の細菌が増えます。そして、それらが肺に入ると誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)という病気を起こします。

災害時でなくても誤嚥性肺炎で亡くなる高齢者の方は多く、災害時にはさらにリスクが高まります。実際、震災関連死でトップに挙げられているのが肺炎なのです。

阪神淡路大震災の場合、災害関連死の約4分の1が肺炎だったと言われており、内閣府防災情報によると、熊本地震では、死因の約3割が肺炎などの呼吸器系の疾患となっています。

もちろん、誤嚥性肺炎の原因は口腔内の細菌だけではありませんが、口腔ケアでお口をきれいに保つことの重要性がお分かりいただけると思います。

被災地の医療機関も被害を受ける

災害時に口腔ケアが求められる理由:被災地の医療機関も被害を受けるため

大規模災害時には、歯科医院などの医療機関も被災するため、停電や断水があると、診療ができなくなってしまいます。

普段なら、虫歯や歯周病になっても、すぐに診てもらえるかもしれませんが、歯科医院が被災すれば、治療を行うことはできません。

また、抗菌薬や鎮痛薬でなんとか症状を和らげればいいと思うかもしれませんが、薬局も被災していることが考えられます。

薬剤師会の災害対応により、薬を集めて処方するシステムもあるのですが、災害時は、心臓病や糖尿病など、全身的な病気の薬が優先されます。例えば歯が痛くても、痛み止めの薬をすぐに処方してもらえるとも限りません。

歯科医院や薬局が被災すると、歯科治療や投薬ができなくなってしまうので、適切な口腔ケアが求められるようになるのです。

災害時の口腔ケアの方法

災害時の口腔ケアは水をどれだけ上手に使うかが大切

では、実際の災害時の口腔ケアについてお話しします。災害時は、普段以上に水が貴重になりますので、水をどれだけ上手に使うかが大切になります。

歯ブラシがあるなら歯磨きを

災害時の口腔ケアの方法:歯ブラシがあるなら歯磨きを

災害時も口腔ケアの基本は歯磨きです。以下の流れを意識して歯磨きを行ってください。

①水の用意水は、コップいっぱいにする必要はありません。
少なくともペットボトルのキャップ2杯分くらいあれば歯磨きできるので、コップの半分くらい用意できれば十分です。
②水を分けるコップ2つに水を分けます。
③お口を湿らせる片方の水でお口の中を湿らせます。
④歯磨きをする歯磨きをします。歯磨き粉は、泡立ちにくいものがおすすめです。
使った歯ブラシは、お口を湿らせた後の水で洗いましょう。
⑤うがいをする残ったコップの水を使ってうがいをします。
うがいが難しい人は、ティッシュやガーゼで拭い取るだけでも十分です。

歯ブラシがない場合

災害時の口腔ケアの方法:歯ブラシがないならうがいだけでも行う

災害時には、避難先に歯ブラシがないことも考えられます。歯ブラシがない場合は、うがいだけでもするようにしましょう。

水やお茶を、ペットボトルのキャップ2杯くらいコップに入れて、お口全体に行き渡るようにうがいしてください。

もし、水も手に入りにくいなら、ティッシュやハンカチで歯の表面を拭ったりすることだけでも心掛けてください。

口腔内の粘膜のケア

もし、総入れ歯などで歯がない人は、歯磨きではなくお口の粘膜をケアしましょう。

歯ブラシで歯を磨くところ以外は、上の表にある歯磨きの方法と同じです。

入れ歯のケア

災害時の口腔ケア:入れ歯のケア方法

入れ歯は、入れたままにしていると、細菌が繁殖する温床になりますので、災害時も入れ歯の適切なケアは大切です。入れ歯についても、入れ歯用の歯ブラシがある場合から説明します。

①水の用意コップ半分くらいの水を用意しましょう。
②水を分ける歯が残っている方は、歯磨き用に水を分けてください。
③ブラシで洗う入れ歯用ブラシを持っている方は、ブラシを水で濡らして入れ歯をきれいにしてください。
歯磨き粉は使わないように注意してください。

入れ歯用ブラシがない場合

入れ歯用ブラシがない時は、ガーゼやティッシュを濡らし、入れ歯を拭ってきれいにしましょう。

万が一に備え、災害時の口腔ケア方法も知っておくと有用

万が一に備え、災害時の口腔ケア方法も知っておくと有用

今回は、災害時の口腔ケアについてお話ししました。災害で避難している時も、健康悪化を防ぐために口腔ケアはとても重要なのです。

また、災害時には水が不足するので、できるだけ水を使わないでケアすることがポイントです。可能であれば、災害時の防災袋に、ご家族分の歯ブラシなど、口腔ケアグッズを入れておくことをおすすめします。

もちろん被災しないことが一番ですが、冒頭でも触れたとおり、日本は自然災害が多い国であるのも事実です。今回のコラムを参考に、災害時の口腔ケアについて、少しでも皆さんの理解が進んでくだされば嬉しく思います。

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